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普通の地図なのに江戸時代? 「れきちず」β版公開 地図システム会社のデザイナーが個人で開発

» 2023年08月28日 18時01分 公開
[片岡義明ITmedia]

 古地図と現代地図を重ねて比べられるサービスは数多くあるものの、古地図に書かれている昔の字は読みにくく、一目で理解するのは難しい──そんな不満を解消する新コンセプトのWeb地図「れきちず」のβ版が8月27日に公開された。

「れきちず」 © れきちず

 れきちずは、昔の日本を馴染みのある現代の地図デザインを使って描いたWeb地図。江戸時代の門や橋、寺社などランドマークとなるものは種別ごとのアイコンで表現し、街道については五街道とその他で色分け。街道に沿って宿場町のアイコンなども配置している。

 船の航路についても海上に点線で描いていて、どの港とどの港を船が行き交っていたのか分かる。また、名称についても、例えば江戸城なら「御城」、隅田川なら「大川」と昔の呼び名を使った。

 開発者は、オープンソースGIS「QGIS」のソリューション開発やデジタル地図開発プラットフォーム「MapTiler」などを提供しているMIERUNEのデザイナー、加藤創さん(Xアカウント名:地図とかデザインとか @chizutodesign)で、個人のプロジェクトとして運営している。

船の航路を海上に点線で描いている

 この地図を作ろうと思ったきっかけを聞くと、「江戸時代の絵図や古地図を見るのが好きでしたが、くずし字で表記されていたり、文字が様々な方向に描かれていたりと少々難解さを感じていました。また、江戸を復元した地図はいくつか存在していたものの、いずれも当時のデザインを踏襲して制作されており、範囲も江戸周辺に限られていたので、現代の地図フォーマットのデザインに落とし込んだ全国の地図を作ろうと考えました」という。

 開発にあたっては、江戸時代の当時の絵図をもとに様々な文献を参照しながら道筋や地名、海岸線などを描くことに苦労したという。工夫したポイントは、地図のデザインやPOI(地点情報)の出る順番について、重要度に応じて自然に見せられるように調整したこと。加藤さんは「開発中、自分が訪れたことのない土地の道筋や地名、寺社などの地点を追加しているときに、まるで旅しているような気分になれました」と話している。

 公開されているのは、現在のところ江戸時代後期(1800〜1840年頃、文化・文政・天保年間)を想定した地図で、東京周辺(葛飾郡・豊島郡・荏原郡)以外の村名やポイント(地点)などが少ない不完全な状態だが、今後の開発ロードマップも公表している。2024年以降は現在の地図と2画面で比較できるようにして、現在の海岸線にも重ねられるようにするほか、26年にかけて地点情報の表示や英語表示への対応、経路検索機能の搭載も予定している。

今後の開発ロードマップと追加機能のイメージ

 加藤さんはこの地図の使い方として、「地図や歴史に興味のある方はもちろん、そこまで興味がなかった方にも見ていただき、身近な土地の歴史や街道歩きなどに活用いただければと思います!」と語る。今後の目標は、古代から現在、そして未来まで一気通貫に閲覧できるWeb地図。まだ発展途上の地図ということで昔の地図に関する情報の提供などを呼びかけている。

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