ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >
セキュリティ・ホットトピックス

小学校の「端末パスワード問題」どう考える? 児童が被害/加害者になる可能性も 指紋認証は代替え案になるかInnovative Tech(3/3 ページ)

» 2023年12月08日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

検証実験の結果と考察

 実験の参加者は、大学生16人と広島市立牛田中学校の教員5人、合計21人である。被験者は、教師として児童に検証システムの使用を指導するデモンストレーションを行い、その後アンケートによってシステムを評価する。実験での指導デモンストレーションのシナリオでは、小学校2年生40人からなるクラスを対象とする。

 結果は、ほとんどの参加者がFIDOによる指紋認証の導入や漢字に読み仮名をつける機能に意義を感じていたが、数字のみのユーザーIDとパスワード設定については意見が分かれた。

 また、学年が上がるほど、検証システムを問題なく扱える割合が高くなることが分かった。特に、小学校低学年では問題なく扱える子が少なかった。児童と教師の利便性についての評価では、教師の方が問題なく扱えると感じる割合が高かった。

 被験者からは、システム改善のためのさまざまな提案があり、それには用語が切り替わる機能の追加、レイアウトの改善、顔認証の利用、教師による画面遷移の管理、ユーザーID入力の省略、指紋認証の指の統一、読みにくい児童への配慮、セキュリティ教育の提案、キーボード入力への対応、PCトラブル時の対応方法などが含まれていた。

 この研究の考察では、学校でのユーザー認証システムに関するいくつかの重要な点が挙げられている。まず、FIDOによるユーザー認証は、指紋認証を用いることで従来のパスワード認証に代わる有効な手段であることが分かった。

 しかし、数字のみのユーザーIDと初期パスワード設定については、児童のユーザビリティを低下させる恐れがあるとの指摘があった。特に小学校低学年の児童への配慮が必要であることが明らかになった。

 次に、クラス内での同時多発的なユーザー認証に対応するため、進度の遅い児童と先行する児童の双方に対応する必要がある。これには、簡略化された操作手順の実装や、児童が負担なく待機できる機能、教師が児童の進度を把握できる監視機能が有効である。

児童の利用に関する課題の集計結果(人)

 学校でのICT活用は今後も拡大する見込みで、このためには児童や教師が使うユーザー認証システムのセキュリティ向上が重要になる。この研究で、学校の特有の事情を考慮したシステムとして、FIDOを使用した認証の意義が明らかになり、検証システムの具体的な改善点も特定。

 学校向けのユーザー認証システムには、FIDOに基づく生体認証を採用し、操作が容易なインタフェースと、同時に多くのユーザーを管理できる仕組みが必要であることが分かった。

Source and Image Credits: 野田 楓稀, 稲村 勝樹, 高野 知佐. 学校を対象としたFIDOによるパスワードレス認証の運用可能性の検討. 情報処理学会 コンピュータセキュリティシンポジウム2023論文集, 1033 - 1040, 2023-10-23



前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.