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教師もITで働き方改革 「お知らせプリント」なくして年587時間の業務削減 クラウドで実現した小学校に話を聞いた(1/2 ページ)

» 2023年03月23日 09時30分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 「生徒1人にPC1台」を掲げる「GIGAスクール構想」を皮切りに進み始めた教育機関のICT活用。一方、それを支える教職員のIT活用はまだ進んでいるとはいいがたい。公立小中校の中では業務の削減や効率化も間に合っていないところもあり、教職員の働き方改革が進んでいるといえないのが現状だ。

 一方、クラウドサービスを活用し、これまで時間がかかっていた業務の効率化に成功した学校もある。さいたま市の埼玉大学教育学部附属小学校では、教職員に負担がかかっていた業務を、サイボウズのクラウドサービス「kintone」を使って改善。年587時間の業務を削減したという。

photo 埼玉大学教育学部附属小学校(公式サイトから引用)

 「お知らせは全部紙媒体だったが、全部デジタル媒体にした。教員が紙を印刷する作業をなくしたことが、業務削減に大きく影響した」──同校の塩盛秀雄教諭兼研究主任は取り組みをこう振り返る。埼玉大附属小の業務改善はどのように実現したのか。

特集:クラウドで進化する教育ICT改革

「生徒1人にPC1台」を掲げる「GIGAスクール構想」により教育のIT化が進み始めたが、教育現場の業務改善が本格的に始動しているとは言い難い。本特集ではクラウドによる業務改革に注目。教育現場を変えるIaaS・PaaS活用のヒントを探る。

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通知1件につき600〜1000枚の紙を印刷 負担になっていた連絡業務

 埼玉大附属小は約630人の児童が通っている。教職員数は50人程度。同校では主に、保護者との情報共有に問題を抱えていたという。原因は紙媒体での連絡を続けていたことだ。当時は教職員が全家庭のプリントを印刷する仕組みで、一つの通知につき600〜1000枚を印刷していた。

 もちろん、通知が複数あればさらに時間がかかっていた。これにより、教職員の作業時間が圧迫されていたと塩森教諭。当時について「しっかりと業務をこなしていく部分について一生懸命考えていたので、勤務時間について意識が薄い部分もあった」と反省点を語る。

 しかし、そこで事態を急変させる出来事が起こった。新型コロナウイルスの流行だ。これにより、情報共有のデジタル化・効率化が喫緊の課題に。ITを活用し、いままでのやり方を改める必要があったという。

 「コロナで子供たち向けの業務が少し減った。同時に働き方改革が全国的に進んでおり、自分たちも勤務時間をベースに変えていかなければいけない、という話になった」(塩盛教諭)

 当時、すでに別のクラウドサービスや校務支援ツールを導入しての業務改善も検討していたと塩森教諭。ただ、予算などの条件が折り合わなかったという。そんな中、当時上長だった人物がkintoneを発見。予算に加え、プログラミングスキルがない教師でもアプリが作れる点、埼玉大学がすでにサイボウズのサービスを使っていた点などから導入に至った。

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