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教師もITで働き方改革 「お知らせプリント」なくして年587時間の業務削減 クラウドで実現した小学校に話を聞いた(2/2 ページ)

» 2023年03月23日 09時30分 公開
[吉川大貴ITmedia]
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約587時間分の業務に加え印刷費も削減 クラウドでどう実現?

 kintoneはプログラミングできない人でも業務用のアプリやツールを作れるサービスだ。IT業界ではノーコード開発ツールなどとも呼ばれる。埼玉大付属小は2020年4月ごろにkintoneの利用を開始。まずは当初の課題だった保護者との連絡ツールを開発・運用した。

photo kintoneを活用して作った連絡アプリのイメージ(kintone公式サイトから引用)

 最初に作ったのは、教職員がスマートフォンやPCから連絡したい対象を選択し、内容を入力すると、自動で通知できるアプリだ。対象は教職員だけ、特定の学年の子供がいる家庭だけといった範囲で指定できる。一度送信した内容を後から確認することも可能だ。利用開始から1年間を実証実験の期間とし、改良を重ねながら使ったという。

photo kintoneを活用して作ったアンケートアプリのイメージ(kintone公式サイトから引用)

 実証実験の期間内には、他にもアプリを作成した。例えば保護者向けアンケートをkintoneで集計できるようにした他、教職員同士がコミュニケーションできる掲示板のような仕組みも開発。それぞれを試しながら利用を進めた。結果、20年4月から21年3月31日までの1年間で、約587時間の業務削減や約18万9000円の印刷費削減に成功したという。

校内・保護者も好意的 ただし「通知多すぎ」など課題も 

 導入に当たって、校内から反対の声が上がることもなかったと塩盛教諭。「従来、メールの一斉送信などは他のシステムも使っていたが、kintoneに一本化することができた。ツールが煩雑になるよりは一括集中する方が良い。保護者もわれわれも管理しやすく、使い始めは説明が必要だったが、反論はあまりなかった。コストもkintoneの分のみになるので、そもそも反対される理由もなかった」という。

 ただ、運用を始めてから出てきた課題もあった。埼玉大附属小ではkintone以外にもクラウドサービスを使っており、例えばオンライン会議などに「Microsoft Teams」などを採用している。ただ、Teamsにも情報共有機能があることから、kintoneの利用開始当初はどのツールを使うべきか、教職員間で混乱があったという。

 「1〜2年使ったことで、ようやく各ツールの強みが浸透していった。自分たちの持っているものを使いこなす難しさはあったが、今はまとまってきた」(塩盛教諭)

 現在進行形の課題もある。埼玉大附属小ではkintoneを活用し、保護者から出欠席・健康状態の報告を集めるツールなども開発したが、その影響で教職員のアカウントでは通知があふれるようになったという。「情報共有が容易になった証拠だが、その分一瞬目を離すとたくさん通知が来るような状態。われわれの運用の問題」(塩盛教諭)

成績処理やデータ管理での活用も視野

 業務削減に成功したことから、実験期間の終了後もkintoneを使い続けている埼玉大附属小。現在はkintoneを使い、教職員を交えつつ保護者同士がコミュニケーションできる仕組みも整えたという。成績の処理や一括管理、現在は紙で集めている家庭の情報の管理などでの活用も検討している。

photo 塩盛秀雄教諭

 「保護者の方も毎年手書きの住所を別々の資料に書いていて大変なので、できたらいいなぁと考えている。本当は手を出したいが、なかなか個人情報管理の観点から労力を割けない状況」(塩盛教諭)

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