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グローバルで組織再編の日立、メガクラウド・競合との距離感は 新会社社長にAWS re:Inventで聞いた(1/2 ページ)

» 2023年12月21日 15時45分 公開
[本多和幸ITmedia]

 米AWSが11月27日から12月1日(現地時間)までラスベガスで開催した年次イベント「re:Invent 2023」では、展示会(Expo)も開催され、多くの参加者で賑わった。AWSが新たに発表した機能・サービスのデモコーナーは流石の人気だったが、一方で多くのパートナー企業も出展し、自社の技術やサービスをAWSユーザーのコミュニティーに積極的にアピールした。日本企業も出展しており、例えば日立グループは、ブースも他社に比べ大きく、展示に力を入れていた。

 ミッションクリティカルな環境向けのストレージベンダーとしての日立は、グローバルのIT市場で有力なプレイヤーとして認知されている数少ない国産ベンダーといえる。同社のクラウドストレージサービス「Hitachi Virtual Storage Platform on cloud」(VSP on Cloud)ではAWSとの連携を深めており、ExpoでもVSP on Cloudやその関連製品を積極的にアピールしていた。

 というのも、日立グループはグローバル市場での成長を加速させるべく、11月に組織を再編している。グローバルのITビジネスをけん引してきた米国子会社であるHitachi Vantaraのデジタルソリューション事業を分社化し、「Hitachi Digital Services」を立ち上げた。

 さらにストレージなどの開発・生産を担ってきた日立製作所のITプロダクツ事業部門を24年4月1日付で分社化して日立ヴァンタラを新設する予定だ。同社はHitachi Vantaraと密接に連携し、ストレージ製品、ソリューションの開発、生産、販売、サービスを一体で進める方針だという。つまり、re:Invent 2023は新体制・ブランドを周知する絶好のタイミングになったわけだ。

 日立製作所理事・ITプロダクツ統括本部統括本部長で日立ヴァンタラの取締役社長に就任予定の島田朗伸さんも現地でre:Invent 2023に参加。そこで、出展の狙いやストレージを中心としたグローバルのITビジネスの展望、AWSをはじめとするメガクラウドとの付き合い方などについて、現地で話を聞いた。

「新体制お披露目の機会」 re:Invent出展の意図

――気合いを感じる今回の出展ですが、誰に何をアピールする狙いがあったんでしょうか

島田 VSP on Cloudを含むハイブリッドクラウド・データプラットフォーム「Hitachi Virtual Storage Platform One」(VSP One)がおおむね完成したので、それをAWS re:Inventに参加しているような、クラウドへの関心が高い人に強くアピールしたいというのが1つ目の目的です。

 また、(前述の)グローバルのITビジネスにおける組織変更がありましたので、日立ブランドとしてのメッセージの広報と、それぞれのグループ会社がどういうことをやっているのかを披露する機会であるとも位置付けています。

ALT 日立製作所理事・ITプロダクツ統括本部統括本部長で日立ヴァンタラの取締役社長に就任予定の島田朗伸さん

――24年4月に日立製作所のITプロダクツ事業部門を分社化して発足する日立ヴァンタラと、デジタルソリューション事業を分社化した後の新生Hitachi Vantaraとの役割分担はどうなるのでしょうか

島田 日本側のヴァンタラが、ハードウェアを含むコア製品・技術の開発と製造・生産を中心に担当します。Vantaraはさかのれば日立製品の販社からスタートしており、これからも北米を含むグローバル市場でのマーケティング、セールスやサービス提供を中心に手掛けることにはなります。

 ただ、両社の知見やノウハウを合わせて議論して、製品やサービス、ソリューションの共同開発に取り組む場面も増えていますし、バリューチェーン全体をカバーする体制をつくったと捉えています。

新体制、“売り方”はどう変わる

ALT 日立ブースではVSP Oneを積極的にアピール

――新設されるヴァンタラと新生Vataraで製販一体の体制をつくるということでしたが、ハイブリッドクラウドのストレージソリューションを拡販していく場合、従来のストレージビジネスとはやはりアプローチが変わってくるのでしょうか

島田 ミッションクリティカルなシステムでも安心して使えるという観点では、コアなテクノロジーの価値はオンプレでもクラウドでも変わりません。ただ、売り方は少し変わっていくと思っています。

 ユーザー企業のアプリケーションを運用する上でのソリューションを提供していくという形のビジネスが増えてくるので、ストレージの“箱”を売るというビジネスとは顧客開拓のやり方が少し違います。ユーザー企業のクラウド活用をサポートするというところから入って、我々のテクノロジーを使ってもらうことでそれを最適化していくというアプローチが中心になると思います。

――そうすると、販路のつくり方も変わりそうですね。ヴァンタラとVantaraの連携だけでは、ストレージビジネスの規模という観点では限界があるように思えます

島田 その通りで、ITプロダクツ事業部門を日立製作所から独立させるのは、日立グループの力だけに頼るのではなく、多くのベンダーと協力してグローバルにビジネスを拡大していくという方針の表れでもあります。グローバル大手のシステムインテグレーターとの連携を広げていますし、AWSやMicrosoftなどのクラウドサービスを担いでいるパートナーと協業し、場合によっては我々のテクノロジーを埋め込んだソリューションを共創するという取り組みまで踏み込んでいる例も増えています。

――具体的な新しいパートナー名などは

島田 そこまでご説明するのは難しいです。ただ、クラウドに強いパートナーとの協業を強化しているとは明確に言えます。また、北米やヨーロッパでビジネスをしているパートナーはもちろん、アジアを拠点にグローバルにビジネスを展開しているパートナーとの関係強化も進めています。

 今回のre:Invent 2023に合わせていろいろなパートナーとのミーティングも設定しましたが、いくつかいい感じの新たなパートナーシップが構築されつつあります。

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