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ライドシェア実証で国を主導 神奈川県の黒岩祐治知事インタビュー(1/2 ページ)

» 2024年01月11日 10時27分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 4期目に入った神奈川県の黒岩祐治知事は「ライドシェア」の検討などの政策転換を打ち出し、注目を集めている。デジタル技術の活用を前面に押し出して先進的な取り組みに積極的な一方、施設での虐待が後を絶たない障害福祉の改革にも取り組むなど、県民目線の姿勢を強調する。県内に3つの政令市を抱える大都市制度の在り方も含め、今年の県政の展望を聞いた。(聞き手 高木克聡)

photo インタビューに応じる神奈川県の黒岩祐治知事

「デジタルは目的ではなくて手段」

――2023年4月の知事選で4選し、4期目がスタートした

黒岩知事 これまでやってきたことをしっかりつなげていく。「いのち輝くマグネット神奈川」をさらに加速させていくことが基本。新たな要素としてあるのが「デジタル革命」だ。生成AIが出てくるなど、世の中がすごいスピードで変わりつつある。(デジタル技術を)いち早く取り入れて、新たなモデルをどんどん作り出していく。

――新型コロナウイルス禍が和らいだが、物価高対策など守りの県政が続く

黒岩知事 私としては攻めの姿勢と思っている。デジタル力をうまく使いながら一人一人の不安を取り除こうと、前に前に進んでいる。例えば子育てでは、LINEを使ったパーソナルサポートの流れをしっかり構築できている。ありとあらゆる分野でデータの力を使って乗り越えていく。

――高齢者らデジタルが苦手な層には

黒岩知事 知事選で掲げた「県民目線のデジタル行政でやさしい社会を実現」に尽きる。デジタルという言葉を聞くと、とっつきにくい。特に高齢者は「ついていけない」という思いを持たれる。でもデジタルは目的ではなくて手段。県民の目線に立って、デジタルという手段を使えば、どういう社会ができるのか。優しい社会になるんだということを見せていきたい。

県と政令市との関係は

――神奈川版ライドシェアの検討が進む

黒岩知事 これはまさにデジタルの力があるからこそ、実現できる典型例だ。コロナの後遺症ともいえるが、タクシードライバーがどんどんやめてしまい、移動手段がなくなった地域ができた。タクシーがないなら一般ドライバーに運んでもらう。きちんと管理され、安全安心を担保された中で、住民の気持ちに応える。今までやったことはないわけで課題はある。その課題をどうすれば克服できるかと丁寧な議論を重ねてきた。県内での実績で、国全体でのライドシェアに関する議論も主導していきたい。配車アプリの開発に時間がかかるので実施時期は未定だが、25年度のできる限り早い時期に実証実験を開始したい。

――改革中の障害者支援施設で虐待事案の発覚が後を絶たない

黒岩知事 23年4月に「当事者目線の障害福祉推進条例」を施行した。この原点は津久井やまゆり園事件。これまでの障害福祉は「暴れると危ないから利用者は部屋に閉じ込めておいてあげたほうが安全である」という視点だったが、それは支援者の視点。(改革によって)利用者は外に出て活動したり、仕事をしたりと劇的な変化が起きている一方で、今でも虐待が起こっている。つまりそれぐらい深い問題であり、しっかりと乗り越えていく必要がある。

――政令市が県からの独立性を高める「特別自治市」の実現を総務省に提言した

黒岩知事 住民目線で考えるべきだ。特別自治市の構想は県から独立するという話。横浜市民や川崎市民が不便を被っているというなら検討の余地はあるが、どう考えてもそんな独立志向に燃えていると思えない。巨大な一層制になったときに、住民の声が反映されるのか。地方自治の流れから逆行する。

――日本を代表する大都市の機能強化は必要では

黒岩知事 大都市としての大きなパワーを生かすには、やはり県と市の連携、協調だ。27年の国際園芸博覧会(花博)は横浜市と県が連携してやりましょうと進めている。二重のアピールで効果は何倍にもなってくる。連携の力を実感したのはラグビーのワールドカップ(W杯)。もともと、横浜市だけでは会場に手を挙げようとしなかったが、県と組んだことによってメイン会場になった。政令市がパワーをもっと発揮したいなら、県と連動しながら世界に向けてアピールするのがいいのではないか。

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