ただ、コミュニティー運営は順風満帆ではなかった。女性中心のコミュニティーということもあり「男性が異様に来たがったり、名刺交換をしたがったりしていた」こともあったといい、対策が必要だったと小室さん。とはいえ、完全に男性を締め出しているわけではなく、メンバーから紹介のあった男性は参加できる「エスコート制度」を設けている。
一方で別の問題として「面白い取り組みでないと、そもそも誰も来ない」問題もあり、悩みの種になったという。しかし、だからこそユニークな施策の実施にもつながったと小室さんは振り返る。例えば参加者みんなでコスプレをしてLT会(ライトニングトーク会。参加者が短いプレゼンテーションを行う会のこと)をしたり、AWS日本法人の社員を読んで講演してもらったりしたという。
「私がコスプレにハマっていたこともあって、参加者は制服着用が必須の『教えて先生! AWSがこんなに難しいわけがない』という会もやった。衣装室もちゃんと設けた」
そして「教えて先生! AWSがこんなに難しいわけがない」でサブカルチャーによった施策がウケると手ごたえを得た小室さんが作ったのが、冒頭で紹介した“AWS美少年”たちだ。
「メンバーを増やそうと考えていたときに、『WordPress』のキャラクター『わぷー』(Wapuu)を見て『キャラクター化ってかわいいな』と思ったのがきっかけだった。そこで絵を勉強してAWSのサービスを擬人化したキャラを描き、まず勤め先の勉強会で見せたところ、大爆笑してもらえた」と小室さん。これならクラウドに対してより興味を持ってもらえると確信し、クラウド女子会でも披露したという。
「最初にウケたとき、面白く、分かりやすくして知ってもらうことがまず大事だと思った。技術はドキュメントを読めば、男女問わず誰でも分かる。大事なのは興味を持ってもらえるか。しかし、当時のクラウド界隈には(女性に)興味を持ってもらえるものがなかった。だから面白く、分かりやすくしなきゃダメだった」
実はスライド後半には、擬人化したサービス同士が“絡む”イラストもある。パッと見はボーイズラブだ。ボーイズラブ創作に特化したSNS「pictBLand」に登録した翌日に情報漏えいが判明した記者もそう思った。ただ、これも趣味だけでない理由があったという。
「当時“WordPress界隈”とも仲が良く、さらにWordPressの競合サービス『MovableType』のユーザーたちとも、勉強会の縁があって仲が良かった。そうしたらある日、(双方の界隈の人が)BLの話をしてきた。
内容をまとめると、MovableTypeの方が有償で高価な一方、WordPressの方が勢いがあり、まるで『年下攻めと年上受け』(BL用語。挿入する方が年下、される方が年上の意。この場合、無償プランがあり勢いがある≒やんちゃで奔放なイメージがあるため、WordPressが攻め)みたいだよねという話だった。これを聞いてなるほどと思った。
女性は関係性をすごく大事にする。AWSがサービスの構成図をまとめていたので『関係性を可視化すると面白いかも』と思った」
つまりこのスライドは、コミュニティーを盛り上げるべく、AWSについて分かりやすく理解してもらう資料だったわけだ。ただし、スライドを作った小室さんは2015年ごろに「興味に変化があった」として運営メンバーを退いており、現在は別の人に引き継いだという。
ある意味で奔放な企画が続いたクラウド女子会は、いまどんな姿になっているのか。続きは後編で紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR