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日本生まれのプロ向け映像編集ソフト「EDIUS」 新バージョンで強化した“小規模ワークフロー”とは小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(1/3 ページ)

» 2024年02月03日 10時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 映像制作には大きく分けて、2つのルートがある。1つは、ライブ。現場で行なわれていることをリアルタイムで中継することで、コンテンツ化する。スポーツ中継や報道番組、ワイドショーなどがこれにあたる。これはすべてを一発本番でやらなければならないため、多くの人が一箇所に集まってえいやっとやってしまうのが一般的だったが、コロナ禍以降人が集まれないということから、リモートワークでライブができないかということから、クラウド化がスタートした。このあたりは本連載でも放送のIP化という文脈ですでにお伝えしているところだ。

日本生まれのプロ向け映像編集ソフト「EDIUS」

 もう1つは、編集ものである。映画、ドラマはもちろん、バラエティやドキュメンタリー、取材報道などがこれにあたる。編集ものはライブと違い、時間をかけて製作するものなので、番組規模の割には少人数で制作できるのがメリットだ。このため、イノベーションが起こりにくい分野である。近年大きなイノベーションは、2010年以降本格化したテープ編集からデータ編集へのシフトであり、それはどちらかというとカメラのイノベーションに引っぱられた格好だった。

 いわゆる編集ソフトも、プロでのシェアは非常に把握しづらい。多くのシェア調査を調べたが、個人に対して調査するとコンシューマや自営業者が多く含まれることになり、局やポスプロで一括導入されている数が出てこないため、プロユースのシェアはなかなかわからないところだ。

 現場で見かけるのにシェア調査で表に出てこないソフトの代表格が、Avid「Media Composer」とGlassValley「EDIUS」だろう。GlassValleyは米国の老舗スイッチャーメーカーだが、EDIUSは日本で開発されていることから、日本にユーザーが多い。ハードウェアスイッチャー、クラウドスイッチャー、編集ソフトの全部を1つの会社で持っているところは、世界でもGlassValleyぐらいしかない。

 ビデオ編集は比較的早くから、クラウドとの連携が模索された分野である。撮影地から映像をクラウドにアップロードし、クラウド上で動作する編集ツールですぐ編集するといった方法論は、すでに2016年の段階でAmazon AWSとGrasValley EDIUS Pro 8で実現していた。

 この撮影現場と編集現場を結ぶという方向性は今でも有効だが、編集側業務でも2020年から始まったコロナ禍によって、人が集まれない状態でグループワークを行なう機能が求められていった。例えばAdobeは2021年にコラボレーションフラットフォームのFreme.ioを買収し、遠隔地同士の製作者が協業できる環境を整備してきた。BlackMagic Designは2022年に独自のBlackMagic Cloudを立ち上げ、撮影と編集、あるいはポストプロダクション業務を複数人で協業できるようになった。

 EDIUSは2023年のEDIUS 11と同時に、Mync 11、Chorus Hub 11をリリースし、小規模なグループワークも可能なシステムへと変化した。大規模なグループワークなら同社にはGV AMPPという強力なソリューションがあり、クラウドスイッチャーやクラウドミキサーからオーケストレーションツールまで、ある意味なんでも揃っている。一方EDIUS 11シリーズは、こうしたクラウドワークフローではなく、数人のチームでコラボレートするような制作環境が組めるよう設計されている。

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