社員2人で自動販売機に行けば、ドリンクを1本ずつタダでもらえる――「社長のおごり自販機」と名付けられたサービスが登場時から大きな話題になっている。手掛けたのはサントリー食品インターナショナルだ。
2人そろって自販機に向かう必要があるので、「自販機に行かない?」など社員同士が声掛けするきっかけになる。オフィスでのコミュニケーション活性化につながると期待されているが、本当に効果はあるのだろうか。
既に導入済みの印刷大手TOPPANでは、「今日はもうドリンクもらった?」など会話が自然に生まれるようになったという。その一方で「始めた当初、私は大失敗をした」と笑いながら明かすのは、導入プロジェクトをリードしたTOPPANデジタルの瀧野誠氏だ。
TOPPANは社長のおごり自販機をどう活用したのか。滝野氏が実際の利用シーンをITmedia主催のオンラインイベント「デジタル戦略EXPO」(2月25日まで)の基調講演で紹介した。
TOPPANはコロナ禍でハイブリッドワークを実施していたが、対面コミュニケーションが大幅に減少したことで組織文化の理解が進まない、社内人脈が広がらないなどの課題を抱えていた。そこで意図的にコミュニケーションを生むべく始めた取り組みが「ZATSUDAN倍増計画」だ。
情報コミュニケーション事業本部とDXデザイン事業部の約5000人を対象に、5つの施策を実施した。その一つが社長のおごり自販機の導入だった。TOPPANは「社長のおごり」ではなく「事業部長のおごり」という名前にアレンジして利用している。
事業部長のおごり自販機は、社員が2人そろって社員証を自動販売機にタッチすると飲み物がそれぞれ1本もらえるサービスだ。ドリンクの費用は会社が負担する。設定をカスタマイズできるので、目的と予算に応じて運用できる。
「稼働時間を限定したり利用回数に上限を設けたりできます。ペアの指定も可能なので、新入社員の配属時期に、新入社員と先輩社員のペアで使えるようにするなどの活用方法も考えられます」(滝野氏)
1日単位や週単位での設定も可能だ。ペアが偏らないように同じ人との利用は週1回に制限する、交流を活発にしたい夕方の時間帯だけおごり自販機の機能をONにして、それ以外は通常の自販機として使うなど柔軟に活用できると瀧野氏は話す。
事業部長のおごり自販機には、どれくらい使われているかを確認する専用のダッシュボードが用意されている。利用人数や回数、時間帯、新しく生まれたペアの数などをチェックして効果の分析や次の施策を検討するのに役立つ。
事業部長のおごり自販機で順調に雑談を増やせたように思えるが、瀧野氏はスタート直後から失敗をしてしまったと笑いながら振り返る。
「1人当たり1日2本までというシンプルな制限のみでスタートしました。何が起きたかというと、3人で自販機に行けば2ペアできるのでその場で1人2本もらえるんですね。両手にドリンクを持ちながら笑顔で戻ってくる人とすれ違うことがよくありました。『瀧野さんごちそうさまです!』なんて言われながら、どうしようかと思っていました」(瀧野氏)
そのうちに事業部長のおごり自販機が社内で有名になり、他の事業部の社員も使い始めたという。「当然すごい金額の請求がありました。とんでもない額が役員に届いて、呼び出されて『これは趣旨と違う』と言われました」(瀧野氏)
事業部長のおごり自販機は、無制限に使うのではなく適切な設定や組み合わせをすることでコミュニケーション活性化につながる。瀧野氏は「私の失敗と同じ轍を踏まないようにうまく使ってください」と語った。
TOPPANはこの他にもユニークなコミュニケーション施策を実施している。ペットロボット「LOVOT」がオフィスを動き回る仕掛けや、上司と部下の1on1ミーティングを成功させる計画などの取り組みの数々を、ぜひ基調講演のアーカイブ配信でチェックしてほしい。コミュニケーション課題を解決するアイデアを得られるだろう。
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TOPPANが取り組んだZATSUDAN倍増計画。ペットロボット「LOVOT」を使ったユニークな施策のほか、チャットツールを定着させる工夫など目からうろこのアイデアが詰まっています。瀧田氏が語るリアルな課題解決の方法をこちらから無料でご視聴いただけます。
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