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“アホ携帯”で見直す、スマートフォンと生活の適切な距離感小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2024年02月28日 17時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

疲れるのが当たり前の社会で

 多くの人にとって、スマートフォンは社会とつながる貴重なウィンドウであることは間違いない。SNSで常に誰かとつながり、動画視聴やマンガ、音楽、写真も全てこれ1台だ。だが、スマホの6インチぐらいの画面が世界の全て、人生の全てだとしたら、そればすごく貧しいことなのではないだろうか。

 例えば写真を撮るなら、ミラーレス一眼のほうが優れているのは言うまでもない。一眼風の写真が撮れるとは言っても、それはシミュレーションとしてうまくいっているという話で、もう一眼とか要らないですよね、という話にはならない。スマホの写真は、大量に撮影してSNSで消費されてゆく情報の1つにすぎない。

 スマホで映画を見るにしても、たまたま手元にある端末でも見られます、という程度の話で、本来なら映画館で見るべきものだろうし、自宅にプロジェクタを設置して100インチぐらいで見るのも楽しい。スマホで見るのは、あくまでも代替手段だったはずだ。

 もっとも時間と注意力を取られているのが、ショート動画系のSNSだ。常に新しいコンテンツが投下され、スクロールするだけで無限に面白いものが現われる。ただぼんやり見ているだけでやめるタイミングを失い、気が付けば大量の時間が消費されている。

 本来その時間でやらなければならなかったことが、やれていないのではないか。それは勉強や仕事といったタスクだけのことではなく、家族や友人と話をするとか、子供の成長をしっかり見るとか、そういったことも含まれる。

Light Phone IIのPVでも、家族や友人と過ごすシーンが多く紹介されている

 スマートフォンは何でもできるゆえに、誰にでもフィットする。仕事中はこれ1つ持っていればいろいろ役に立つというのは便利だ。だが休日に持つものとしては、どうなんだろうか。あまりにも多くのコンテンツが、われわれにもっと消費せよと追いかけてくる。それよりは、ちょっとした連絡が取れるだけ、あとは時計とかタイマーとかあったら便利だよね、というぐらいまで絞り込んだものでいいのではないか。

 つまり「Light Phone」は、いうなれば「Holiday Phone」だ。休みの日は、ちゃんと遊んでちゃんと休め、人間らしい生活に戻れと、そういう事を示唆している。

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