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あたりまえになった「ロボット掃除機」 便利だからでは許されなくなる、“次の競争”とは小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2024年03月11日 18時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

「賢さ」が進化したロボット掃除機

 初期のロボット掃除機は、まだ対物センサーを搭載しておらず、正面にあるバンパーに何かがぶつかったらランダムに向きを変えて進むだけ、というシンプルな製品だった。ただ階段等からの転落防止のために、底部に床センサーを備えたものはそこそこあった。そんなものでも、15分も動かしていれば、結果的に部屋の床はだいたい網羅できる。

 実は当時から、吸引力には問題なかった。吸引口前の回転ブラシでゴミやホコリを巻き上げて吸い取る構造なので、吸引力だけでゴミを引っぺがす必要がないからである。この技術は、今もそれほど変わっていない。

 大きく変わったのは、センサーとその使い方だ。昨今の掃除機は、対物センサー搭載は当たり前になっており、バンパーは補助的な役割となった。またステレオカメラを搭載し、障害物を立体的に把握できるものもある。障害物の奥行きが検知できれば、回り込めるのか、それ以上行けないのかが判断できるものもある。

対物センサーが搭載され、カメラ性能が向上したことで障害物検知精度が向上

 例えばダイニングに4つの椅子とテーブルがあれば、その下はロボット掃除機からすれば、林のように障害物が乱立している状況である。従来型の単体センサー機では、一応行ってみてバンパーにガツガツぶつかる割には、中まで入っていけなかったりした。一方3Dセンサー機は、足と足の幅を検知して、自分が入れそうかを判定する。わざわざぶつかりに行かなくても、入れそうなら入るし、無理そうなら入らない。

 これらの対物センサーは、その瞬間瞬間で判断して、今の動きを決めるものだ。一方で最近のロボット掃除機は大抵、天板に丸い突起が出ている。この部分は回転式の構造になっており、周囲にレーザーを照射して、物体との距離を測っている。レーザー測定は元々は地形測量機などで使われてきた技術だが、自動運転に応用されるようになったことで、破格に性能が向上した。測量は解析まで時間がかかっても問題ないが、自動運転は高速で移動中にセンシングするものであり、人の命も預かっている。

 こうした技術がロボット掃除機に搭載されるようになり、部屋の形や障害物の位置などをマッピングできるようになった。事前にこうした情報がわかれば、デタラメに動き回って掃除するのではなく、部屋の形や面積に合わせて、合理的な動線を自動で算出できるようになった。こうしたマッピング機能は、だいたい3万円以上のモデルには搭載されている。

 マッピング情報は、スマートフォンのアプリを経由してユーザーへ提供される。これにより、特定の部屋だけを掃除させたり、侵入しないようにバーチャルウォールを設定したりできるようになった。

 スマートフォンとの連携は、別の機能も提供できるようになった。カメラセンサー搭載機では、そのカメラ映像をスマートフォンに飛ばせるものもある。例えば外出先から室内の状態を見るために、ロボット掃除機をリモートで操縦して巡回するといったことも可能になった。さしずめ、床を這うドローンである。

内蔵カメラによる見守り機能も

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