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あたりまえになった「ロボット掃除機」 便利だからでは許されなくなる、“次の競争”とは小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2024年03月11日 18時30分 公開
[小寺信良ITmedia]
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ゴミを吸い上げるステーションの進化

 ロボット掃除機は、充電のために充電装置のところに戻る必要がある。そこでその充電装置を拡張して、ロボット内に吸い上げたゴミを移すという、ステーション機能を持たせるように進化した。10万円前後の高級機は、大抵このステーション型となっている。

ロボット内のゴミを吸い上げるステーション型が普及

 ロボット掃除機に「水拭き」をやらせるというのは、日本ではiRobotの「ブラーバ380j」が最初だと思うが、あれは水拭き専用機だった。その機能を取り込んで、吸引掃除と水拭きを同時にやれる掃除機が出るまで、そう時間はかからなかった。

 ステーションは、この水拭きの自動化にも対応した。掃除機内タンクへ水を補充し、掃除から戻ってきたらモップを水洗いし、温風で乾燥させるところまで自動だ。

 だが水拭きをさせるには、掃除機の裏面にモップや水拭きパッドを取り付ける必要がある。また水拭きをカーペットの上でやられたら最悪なので、マッピング機能で水拭き禁止エリアを設定し、通常の掃除とは別指定で動かさなければならない。

 これを両立させようというのが、最近の高級機のトレンドだ。具体的には、カーペットをセンサー認識したら、モップを上に持ち上げて水拭きをしない、という機能である。ただ現時点では、持ち上げ幅に限界があり、毛足の長いカーペットでは濡れてしまう。

モップを持ち上げるタイプもある

 ただ、問題の解決法は1つではない。要するに水拭き用のパッドの着脱がめんどくさいという話なので、ステーション側でパッドを着脱するとか、プログラムによって先に吸引掃除したのち、パッドを濡らして水拭きに入るといった方法もあり得るだろう。

 現時点で多くのロボット掃除機は、スマートホームに対応している。したがってスマートスピーカーに向けて、音声コマンドで清掃の開始や停止ができる。

 ただそれは、開始と停止コマンドを投げているだけで、「賢い」とはまた違う。現在のロボット掃除機は、清掃パターンをAIによって計算するというものも多いが、我々が今一般にAIと読んでいる大規模なものとはレベルが違う。

家の状況を知り尽くしているロボット掃除機は危険か?

 だがそもそもネットワークには繋がる機器であり、スマートホームを経由して大規模AIへ接続し、少ないセンサーで高度な障害物判定ができたり、逐一変わる部屋の状況、例えばドアが開いてるとか閉じてるとか、障害物を押しのけて掃除しても大丈夫かとか、ケーブルに絡まったら自動的に反回転して脱出するとか、カーペットがめくれ上がったら押して元に戻してくれるとか、ローカルでの演算ではできなかったことができるようになる可能性はある。おそらくそうなったときに、ロボット掃除機の次の競争が勃発する事になる。

 しかしそうなると、部屋の状況が外部へ向かって発信されることになる。一昔前のホームオートメーションの時代から、部屋の状況をセンシングして外部に送信するのはどうなんだという議論があった。当時はセンシングした状態から、家族へアラートを発するというだけのシンプルなものだったが、人が絡むことで、プライバシーの問題が議論されたのだ。例えばトイレに行く回数が多い、トイレに居る時間が伸びているみたいな情報は、大きなお世話と言えば大きなお世話なのである。

 見守りや安全のためには、ある程度は仕方がない、家族の同意があれば問題ないのではといった結論になったが、AIの学習に使われるとなれば、また違った議論があるだろう。部屋の情報だけで、人の情報は取らないといった取り決めも必要だろう。ただ、せっかくなら見守りにも使いたいというニーズもあるだろう。

 現在AIについては、著作権ばかりがクローズアップされている。だが個人宅の情報がやり取りされるようになれば、セキュリティやプライバシーとの関係も出てくる。ロボット掃除機にAIが利用される前に、もう一歩踏み込んだ厳格な議論がなされるべきだろう。

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