JAXAは5月28日、小型月着陸実証機「SLIM」について、月内の運用を断念することを明らかにした。1月の月着陸以降、想定外の過酷な状況で動いてきたSLIMだが、「いよいよ影響が現れた可能性もある」という。
月面では110℃に達する灼熱の昼と、−170℃まで下がる極寒の夜が14日ごとに訪れる。とくに夜の寒さはSLIMに搭載した機器の設計範囲を超える厳しい環境。しかし、1月20日に月面に着陸したSLIMは、3度にわたる「越夜」を成功させて関係者を驚かせた。
JAXAのSLIM公式Xアカウントによると、5月24日と25日に通信回復を期待してコマンドを送信したが、SLIMからの電波を確認できなかったという。27日夜にも再度試みたが、SLIMからの応答はなかった。
電波が確認できない理由は良く分かっていないが、「月着陸以降大半の機器が設計想定外の過酷な状況で使用されておりましたのでいよいよ影響が表れた可能性もあります」。28日には日が暮れて発電できなくなっているため、月内の運用は難しいと判断した。
ただし、これで終わりとは考えていないようだ。JAXAは、6月も太陽電池による発電が十分に得られたと見込まれる時期に再度、挑戦する考え。夜の間、SLIMの電源はOFFになるため「全体がリセットされて再起動することを期待している」という。
「SLIMはこれまでの活動期間において、既にミッションとして打ち上げ前に想定していたよりも遙かに多くの貴重なデータを地上に送信してきておりますが、少しでも長く活動してもらうため復旧に向けての活動を継続します」(SLIM公式Xアカウントより)。
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