それがなぜ、今になってそうした問題に出くわす人が増えているのかというと、携帯電話サービスの在り方が大きく変わっていることが影響しているのではないかと筆者は見ている。
携帯電話会社のサービスは以前、長期間の契約を約束する代わりに毎月の料金を割り引く一方、中途解約すると高額な違約金が請求される、いわゆる「2年縛り」などがあったことから解約がしづらかった。だがNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が市場を寡占し、“縛り”によって競争を停滞させている状況を問題視した総務省がメスを入れ、結果として2019年の電気通信事業法改正によって“縛り”は有名無実化。解約が非常にしやすくなっている。
それに加えて、2020年に首相に就任した菅義偉氏の政権下で、携帯電話料金の引き下げが行政主導で進められた結果、低価格の料金プランが急増。月額0円から利用できるKDDIの「povo 2.0」の登場や、当初月額0円から利用できるサービスを提供していた楽天モバイルの新規参入などもあって、携帯電話サービスを契約する敷居も大幅に下がっている。
それに加えて、アップルの「iPhone」やグーグルの「Pixel」シリーズがeSIMを採用したことを機として、物理SIMとeSIMの「デュアルSIM」に対応するスマートフォンが一般化。そして2022年に、3日間にわたって発生したKDDIの大規模通信障害の影響により、eSIMを非常時のバックアップ回線として活用する動きが進んだことから、1台のスマートフォンで2つの回線を使っている人も増加傾向にある。
そうした複数の要因からここ数年のうちに携帯電話番号の流動性が急速に高まり、再割り当てがなされた番号に接する人も増えた。その結果、不審な電話を受ける人の割合も必然的に増えたのではないかと考えられる。
再割り当てによる問題を起こさないためには携帯電話番号が増えることがベストなのだが、電話番号にはどうしても限りがある。総務省はこれまでにも、枯渇が進む携帯電話番号の拡大に向けた対策を進めてきており、1999年には電話番号を10桁から11桁に拡大。2002年にはそれまでの「090」に加え「080」から始まる番号を追加し、2013年には元々PHS向けだった「070」から始まる番号を追加している。
だがそれでも携帯電話番号の枯渇が見込まれたことから、総務省では固定電話と携帯電話を融合したFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス向けに割り当てられているものの、ほぼ使われていない「060」から始まる番号の割り当て検討がなされてきた。ただ2021年の「IoT時代の電気通信番号に関する研究会」の議論では、「020」から始まるデータ通信専用の番号割り当てによって逼迫をカバーできるとされ、060から始まる番号の割り当ては見送られてている。
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