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駅舎を3Dプリンターで作るJR西日本 コスト削減だけではない、その狙いとは

» 2024年10月18日 09時00分 公開
[山川晶之ITmedia]

 3Dプリンタで駅舎を作る――10月15日から幕張メッセで開催中の「CEATEC 2024」に出展したJR西日本ブースにこんな展示があった。老朽化した小規模駅舎を、3Dプリンタを使って建て替えるというものだ。

JR西日本が駅舎で使うものと同じ技術で作られた3Dプリンタ製オブジェクト

 3Dプリンタというと、樹脂をリール状にしたフィラメントを溶かしながら成型する熱溶解積層方式(FDM)や、光硬化樹脂を使って成型する光造形方式(SLA)などがあるが、いずれも層を積み重ねることで立体物が出来上がる。3Dプリント駅舎も同じで、コンクリートを扱える巨大3Dプリンタを使って層を作っていくのだが、単に重ねるのではなく、枠状に成型して中が空洞な壁面を構築。そのなかに鉄筋を配置してコンクリートを流し込むことで、木造よりも強度と耐久性に優れる鉄筋コン構造を作ることができるとしている。

 この取り組みは、「3Dプリンタ住宅」を手掛けるセレンディクス(兵庫県西宮市)との提携により実現したもの。同社は自動車の価格で買える住宅をコンセプトに、巨大3Dプリンタを使った低コストかつ設計自由度の高い建築に強みを持つ。だが、JR西日本としては低コスト建築よりも工期の短さに注目しているという。

セレンディクスが手掛ける小型住宅「serendix10」(画像:セレンディクス公式サイト)

 鉄道事業者が工事しようとする場合、基本的には終電後から始発までの数時間に限られる。駅舎の建て替えも同様で、工事に使える時間が少ないため工期も長くなりがちだ。一方3Dプリンタ駅舎の場合、必要なパーツをあらかじめ工場でプリントしておけるので、あとはパーツを現地に運んで組み立てるだけで済む。労働人口の減少で作業リソースを確保しづらい中、現地作業を大幅に減らすことができる。

 一方で、セレンディクスの強みでもある低コスト建築だが、ブーススタッフによるとコストは下がる予定ではあるものの「実際にやってみないと分からない」とのこと。住宅とは勝手が異なることもあり、協力業者や意匠・構造チームと共同でモデルを設計している最中で、それが完成すればおおよそのコストが判明するという。一応、提携の目的に建設コストの削減も盛り込まれているのだが、それ以上に工期短縮のプライオリティが高いことがうかがえる。

 展示ブースのスタッフによると、想定駅舎は地方にある小規模のもので、利用者にとってはほぼ待合機能のみで改札も簡易型の無人駅になるという。出力したパーツはコンクリートの塊でもあるため非常に重く、どう搬入するか、どのようにクレーンで釣り上げるかといった制限を鑑みながら、2024年度中に1駅建設することを目標にしている。

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