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「ジョジョ」荒木飛呂彦さんの“生成AIに関する意見”で物議 新刊の一節を巡り議論勃発

» 2024年11月19日 19時30分 公開
[ITmedia]

 漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの作者・荒木飛呂彦さんの創作論をまとめた書籍「荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方」(集英社、11月15日発売)が話題だ。キャラクター造形の考え方などもさることながら、生成AIに対する見方などが語られ、SNSで物議を醸している。

書影(画像は集英社公式サイト「荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方」から引用)

 全3章と番外編、あとがきからなる同書では「第二章 超重要! 悪役の作り方の基本」と「第三章 漫画の王道を歩み続けるために」で、AIをはじめとした技術への見方について触れられた。

 荒木さんはAIに対して、第2章では以下のように警鐘を鳴らした。(集英社 荒木飛呂彦著「荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方 kindle版から引用)

 「社会の悪」ということに関連して言うと、これからAIが社会に広がっていくことで、それを利用した詐欺師が跋扈する怪しい世界がますます増えると思います。

 この前、「これ、俺が描いたよな」という絵を見たのですが、実はAIで描いたものだと知って驚きました。僕が漫画を描くときは、ちょっと自分らしさの印になるようなものを絵に入れています。でもその絵は「この辺のまつ毛の感じとか、俺の絵だよね」というところまでそっくり真似をしていて、本当に見分けがつかないのです。最近の絵だったら「いや、こんなの描いてないよ」とすぐわかりますが、一〇年くらい前の絵でこれをやられたら、記憶も曖昧になっているので、もう全然わかりません。今後、AIが進化すればするほど、こういうことが増えていくでしょう。

 アートは時代を反映するもので、漫画もそのひとつですから、そこにこういう詐欺師の世界が出てきているということは、近い将来、詐欺師の世の中がやってくると言えるのかもしれません。そういう時代の「悪」は必ずこれからの漫画に影響していくことになるはずです。

 一方で第3章では、以下のように技術の発展へ期待も寄せている(引用元は同上)。

 とはいえ、僕もデジタルをまったく取り入れていないわけではありません。デジタルツールは漫画を描くための道具のひとつですから、たとえばアシスタントが背景などを描くとき、僕が撮影した写真をソフトに取り込んで加工したデータを使っています。ただそのままだと、そこだけなんだか無機質になって、立体感も出ないので、仕上げには必ず人間の手を入れます。しかし今後、AIがさらに進化していけば、そうした欠点も解消され、人間が手を加える余地はどんどん少なくなっていくでしょう。道具という意味では、デジタル技術はもっともっと発展していってほしいですし、いずれ頂点を極める日も来るのだと思います。

 一連の言及について、生成AIに肯定的な人とそうでない人で意見や受け止め方が割れている。前者から始まる主張のみを取り上げて「生成AIそのものへの批判」と受け取る意見が見られる一方で、後者と合わせ「生成AIによる詐欺のみへの警鐘」と見る意見も。悪役をテーマとした本とあってか、議論は苛烈さを増している。

 同書は集英社の単行本に掲載していた記事に加筆したもの。ジョジョシリーズの敵キャラを参考に、荒木氏自ら悪役の作り方を紹介している他、ストーリーやキャラクターを考えるポイントなどをまとめている。CGや縦書き漫画「Webtoon」といったテクノロジー・サービスに対する、荒木氏からの見方も示されている。価格は1034円。

書影(画像は集英社公式サイト「荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方」から引用)
背表紙(画像は集英社公式サイト「荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方」から引用)

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