11月13日から15日の3日間、千葉幕張メッセにて日本最大の放送機器展「Inter BEE 2024」が開催された。Adobeは2023年、ちょうどInter BEE 2023の会期中のど真ん中に「AdobeMax Japan 2023」を東京ビッグサイトで開催してしまい、業界人はInter BEEに行くかAdobeMax Japanに行くかの「踏み絵」を迫られて、誰も得しないという状況になってしまった。
一方今季のAdobeMax Japanは24年2月に設定、「AdobeMax Japan 2025」として開催される。つまり「AdobeMax Japan 2024」の開催はない、ということである。
今年のInter BEEのタイミングで、米国からプロビデオ シニアマーケティングマネジャーのカイリー・ペニャさん、Premiere Proプリンシパルプロダクトマネジャーのフランシス・クロスマンさんが来日し、14日に特別セッションを開催した。筆者はそのタイミングで二人に直接お話を伺い、最新バージョンの機能やPremiere ProとAIの関係の詳細を知ることができたので、皆さんにも情報を共有したい。
Premiere Proは24年10月に新バージョン25をリリースした。要望が多かったプロパティパネルが搭載され、コンテキストごとに必要なツールが表示されるようになり、操作性が向上した。また11月上旬発売予定となっているキヤノンC80で搭載のCinema RAW LightおよびXF-HEVC Sの直接読み込みにも対応した。
またパフォーマンスも向上し、Apple ProResコーデックへの出力は従来比の3倍高速化した。一方でこの11月にはAppleがM4プロセッサ搭載製品をリリースしたばかりだが、M4プロセッサに対して何か特化したポイントがあるのだろうか。
フランシス・クロスマンさんいわく、「特にM4プロセッサに対してなにか特別なことはしてませんが、どのプロセッサに対しても3倍速くなっています」との事だった。
カラー管理に関しても、現在β版で大きなアップデートが導入されている。動画クリップのメタデータを参照し、LUTを使うことなく自動的にシーケンスの色空間に対してフィットするようマネジメントされる。例えばMXFのように、メタデータを別ファイルで管理するフォーマットもあるが、基本的には動画ファイル内に書き込まれているメタデータを参照する。
編集者が苦労してLUTを探してくるといった作業が不要になるだけでなく、指定した色空間ではないLUT、あるいは微妙にバージョンが違うLUTを間違えて当てて作業してしまったといったエラーも防げるだろう。
同様の機能はDaVinci Resolveにも搭載されており、今回のNABではEDIUSの次期バージョン11に自動カラーコレクション機能が搭載されることを確認している。ダイナミックレンジと色域管理は、今後は自動化される方向にあると考えていいだろう。
またすでにPhotoshopやAdobe Expressで搭載されている、コンテンツクレデンシャル機能がPremiere Proにも搭載される。これまでは写真や静止画ベースだったが、いよいよ動画にも対応するという事になる。
コンテンツクレデンシャル機能は、ネット等で流布されている画像の来歴が分かるようにするというもので、生成AIや合成などによるフェイク画像を見分けられる機能として期待されている。ただ、そもそも合成を前提としたコンテンツに対しては、どういう役割を果たすのだろうか。
フランシスさんは、「メタデータの中に制作者や制作に使用したツールなどが識別されることで、クリエイターが市場に認知されたり、ファンを増やすといった効果が得られるでしょう」という。
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