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NHKの「ネット受信契約(案)」が“ダークパターン”過ぎて見過ごせない件 一度“同意”したら取り消せない、は取り消しか(2/2 ページ)

» 2024年11月30日 16時30分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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解約のハードルの高さもダークパターンか

 NHKは、解約方法についてもテレビのそれを踏襲しようとしているようだ。NHKの説明会に参加したPhileWebの記事内容を元に、NHKに「解約方法の『視聴できる端末を何も持っていないことを何らかの形でわかるようにしていただく』という部分の“端末”は、スマートフォンやPC、タブレットなどを含むと思ってよろしいですか?」と確認したところ、以下の回答があった。

「解約にあたっては、ご利用のインターネット接続機器が受信契約の対象でないことを確認させていただくことになると考えています。テレビを撤去して放送受信契約を解約される場合に、他のテレビがないかお尋ねしているのと同じように、世帯の中で受信契約の対象となる機器が他にないか、スマートフォンやパソコン、タブレット端末を含めてお尋ねすることになりますが、確認方法など手続きの詳細は検討中です。視聴者・国民の皆さまに分かりやすい手続きとなるよう検討を進めてまいります」(全文ママ)

「妨害(Obstruction)」に当たる可能性

 このように解約のハードルを上げて解約しにくくする行為もダークパターンの可能性がある。2022年にOECD(経済協力開発機構)が出したリポート「ダーク・コマーシャル・パターン」にまとめられている類型でいえば「妨害(Obstruction)」に当たる可能性が高い。妨害は「ある行為を諦めさせる意図で、タスクの流れやインタラクションを必要以上に困難にする」(国民生活センターの資料より)ことだ。近年はサブスクや通信サービス会社の解約方法が分かりにくいサイトデザインなども問題になった。

OECD(経済協力開発機構)の類型の一部(出典:三菱総合研究所、ダークパターン及びプロファイリングについて)

 そもそもネットサービスにおいて各アカウントの利用状況はサービス事業者のシステムで確認できて、ユーザー宅の端末を調べる必要などない。それがもっとも早く確実で利用者の理解も得られる。なによりスマートフォンは1人1台に近いレベルで普及し、生活必需品になっている。個人的にNHKの方法論は、“スマホを人質をして契約継続を迫っている”ようにみえる。

NHKの存在意義は?

(出典:NHK放送文化研究所「国民生活時間調査2020」)

 NHKは、基本的にテレビと同じ契約スキームをネット契約に持ち込みたい考えのようだ。しかし半世紀以上前のテレビ黎明期につくられた手法を、現代のネット契約に持ち込むのは多分に無理がある。

 前編の冒頭で取り上げたように、すでに2割を超える国民がテレビとはあまり縁のない生活をしている。にも関わらず、まるで視聴者を確保するためにネット上に“罠”を張ろうとしているかのようだ。

 仮に今回の契約手順(案)がそのままの仕様でサービスが始まったとしたら、ダークパターン対策を進めている総務省など各省庁は面目がつぶれ、NHKの倫理観、その存在意義に疑問符を付ける国民が増えることになるだろう。

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