ANYCOLORは、VTuber卒業リスクについて「当社事業の特徴として逃れられない点ではあるものの、実際は当社の売上は多くのVTuberに分散しており、特定VTuberへの依存によるリスクが顕在化する可能性は高くない認識」と説明。その上で「その他サポート体制の充実や、ライバーが望むような幅広い活動支援できる体制を充実させることで卒業などのリスクに対処する」と、おおむねカバーと同様の対応方法を述べている。
しかし、その中期経営方針はカバーとは異なるようだ。ANYCOLORは「引き続きVTuberの育成・デビューに取り組むとともに、エコシステムの強化を通してVTuber1人当たりの収益を拡大」と方針を打ち出している。
具体的には、年平均10〜15%程度の新規デビューによるVTuber数の増加計画や、VTuber養成プログラム「バーチャル・タレント・アカデミー」の取り組み強化を掲げ「長期的なファン層の拡大を目指した、今までに無い領域の個性豊かなVTuberの増員」を目指す。
ANYCOLORはVTuber市場について「市場の売上は当社を含む上位2社が半分超を占めており、大手がインフラ面や既存コミュニティーの活用を通し、優位性を発揮し易い状況」と説明。既存コミュニティーを活用することで新人VTuberの垂直的な立ち上げや、複数人の同時育成・デビューが可能であるとしている。
このような状況を踏まえ、コマース領域の企画を充実化して各VTuberのファンコミュニティーを拡大するとともに、マネジメントや企画担当のビジネス領域の従業員を増員。所属VTuberのスケジュール管理によって、機会損失を回避して販売機会を拡大する方針を示した。
現在、カバーに所属するVTuberは87人(11月12日時点)、ANYCOLORは計166人(12月11日時点)。一方、従業員数はカバーが602人(11月12日時点)、ANYCOLORが493人(12月11日時点)となっている。“少数のVTuber”を大勢で支えるカバーと、“大勢のVTuber”を少数で支えるANYCOLORという様相である。
VTuber業界のトップランナーとして、市場を席巻している2社だが、その方針にも違いが見えてきた。また、企業所属VTuberたちも、先のキャリアのためにさまざまな選択を取っている。このような状況下で、VTuberファンたちが求めるものは一体何なのか。企業とVTuber、ファンを取り巻く関係に今後も注目したい。
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