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「VTuber×生成AI」ビジネスの可能性 ホロライブ運営企業の代表は「考えていない」 その理由は?(1/2 ページ)

» 2024年01月30日 18時19分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 生成AIを使ったVTuberは、ビジネスとして考えていない──VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバーの社長兼CEO・谷郷元昭さんはそのように断言した。同社は1月30日、記者向けに「VTuber市場に関する勉強会」を開催。生成AIを活用したVTuberビジネスは、現状では展望がないというが、それは一体なぜか。

カバーの社長兼CEO・谷郷元昭さん

 ホロライブプロダクションでは2023年9月、所属VTuberの博衣こよりさんがAIチャットソフト「AIこより」を自身の生配信で登場させていた。博衣こよりさんの基本情報や性格を学習しており、質問をすると博衣こよりさんの声で回答を読み上げる。生配信には、博衣こよりさんと同じ姿で登場。最新技術を使った配信は、SNSなどで話題になった。

博衣こよりさんの配信に登場した「AIこより」

(関連記事:VTuber「博衣こより」のAIチャット「AIこより」 カバーが開発背景紹介 作ったのは新卒エンジニア

 今後カバーでは、VTuberの“中の人”(演者)を生成AIに置き換える「生成AIVTuber」を運用していく方針はあるのか。この問いに対して谷郷さんは、生成AIとVTuberをかけ合わせるビジネスに「可能性はない」と断言した。その理由として「生成AIを使ったVTuberは、ボーカロイドのビジネス構造に近いと思っている」と見解を話す。

 谷郷さんは、カバーのVTuberビジネスについて「各タレントが持つ目標や目指すビジョンをファンが応援する形」と表現。投げ銭ができるライブ配信の場やサブスクライブ、ファンクラブなど、各VTuberを応援できる場をファンに提供するビジネス構造となっている。

 一方でボーカロイドの世界では「ボカロP」と呼ばれる、ボーカロイドで楽曲を作る人たちが存在する。生成AIを使ったVTuberのビジネスは、この構造に近いという。

 「仮に生成AIVTuberを作ったとしても“ファンが生成AIを応援する”とはなりにくい。あくまで、生成AIVTuberを作ったクリエイターが面白い動画を作り、それがバズって、応援とは別の形の動画ビジネスとしてなら、海外でも近い事例があり、ありえると思う。しかし、当社が行う応援のビジネスとは違うものだと思う」(谷郷さん)

VTuberへのスパチャは減少傾向 一体なぜ?

 また、勉強会では同社の収益構造にも言及。売り上げとしては主に「配信/コンテンツ」「ライブ/イベント」「マーチャンダイジング」「ライセンス/タイアップ」の4種類あるという。20年までは配信/コンテンツとライブ/イベントが売り上げの半分を占めていたが、21年以降はこれらが減少傾向に。今ではこれらは売り上げの約4割に落ち込み、マーチャンダイジングとライセンス/タイアップが売り上げの過半数を占めている。

カバーの収益の推移

 この傾向は、ライブ配信中の「スーパーチャット」(スパチャ、投げ銭のこと)にも表れている。YouTubeのさまざまなデータを収集・公開している「Playboard」(韓国のDIFFが運営)が発表したVTuberの年間スパチャランキング(集計期間23年1月1日〜12月10日)によると、ランキングのトップ10の総額は5億1167万4553円だった。しかし、22年の同ランキングではトップ10の総額8億517万2193円であり、約4割減少している。

2023年のVTuberスパチャランキングトップ5

(関連記事:2023年、最もスパチャを集めたVTuberは? 1位はホロライブのあの人 総額は22年よりも“4割減”

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