このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
X: @shiropen2
英インペリアル・カレッジ・ロンドンなどに所属する研究者らが発表した論文「Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis」は、有酸素運動が体重減少や体形改善に与える効果について調査した研究報告である。
研究チームは、世界中で実施された116件の臨床試験のデータを分析した。これらの試験には合計6880人が参加し、その61%が女性、平均年齢は46歳であった。全ての試験で、最低8週間にわたる監督下での有酸素運動プログラムを実施した。
分析結果によると、わずか週30分の有酸素運動でも、体重が0.52kg、ウエスト周囲径が0.56cm、体脂肪率が0.37%減少することが明らかになった。さらに重要な発見として、運動時間を増やすほど、その効果は直線的に高まることを示した。
具体的には、週150分の有酸素運動を行うと、体重が2.79kg減少し、週300分まで増やすと4.19kgの減量効果が得られた。ウエスト周囲径については、中等度の強度で週300分の運動を行うと4.21cm、中等度から高強度で行うと5.34cmの減少が見られた。
安全性についても評価が行われ、有害事象のほとんどは軽度から中等度の筋肉や関節の不快感で、発生率は100人当たり2件程度と低かった。また、運動は精神面と身体面の両方で生活の質を向上させる効果があることも確認できた。
特筆すべき点として、臨床的に意味のある改善効果を得るためには、中等度以上の強度で週150分を超える有酸素運動が必要であることを示した。
Source and Image Credits: Jayedi A, Soltani S, Emadi A, Zargar M, Najafi A. Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis. JAMA Netw Open. 2024;7(12):e2452185. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.52185
「週末にたくさん運動」はどのくらい健康に効果的? 7万人以上を対象に分析 中国チームが発表
ネット環境が良すぎると太りがち? 回線速度と肥満の関係 オーストラリアチームが14年分のデータを分析
中年から脳の老化を遅らせるための8つの要素 脳スキャンとAIで分析 40歳以上2万人近くを対象に米研究者が調査
「手書き vs. タイピング」 どっちが脳を活性化する? 36人の脳波を記録 ノルウェーチームが検証
若い頃のいじめ被害→長年にわたって脳構造が変化 2000人以上を調査 男女で異なる変化もCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR