IPでありながらベースバンドに近い特性を持つということから、放送の基幹システムはSDIからSMPTE ST2110に転換されようとしている。今や放送機材は、専用ハードウェア機器からコンピュータ機器へと変わりつつあるが、コンピュータのソフトウェアによる映像処理をST2110へ接続するボードとして、「KONA IP25」に注目したい。
KONA IP25は、Windows、 Mac、Linuxに対応し、2.5Gイーサネットを通じて4K60Pを伝送できる、PCIe Gen4の8レーンカードだ。恐らく競合製品はまだ多くないと思われる。過去のKONAカードと互換性があるため、ドライバベースでは過去のKONAカードが入っていたマシンなら、簡単にST2110に接続できるのがポイントだ。
AT2022-7の冗長機能に対応しており、2系統のネットワークポートのうち片方がダウンしても、もう片方へ自動的に切り替わる。これは接続ロスが許されない放送局では必須の機能である。
またカード自体がNMOS(Networked Media Open Specification)に対応しており、コンピュータ側で処理を行う事なく、ネットワーク内の機器登録と映像切り替えを実現する。PTPにも対応するので、同期もクリアできる。KONA IP25にはDSK機能があり、出力の上にスーパーやバナーをオーバーレイできる機能も備えている。
対応ソフトウェアは、Apple Final Cut Pro、Adobe Premiere Pro CC、Avid Media Composer、AJA Control Room、OBSなどとなっている。なおBlackmagic DesignのDaVinci Resolveは、以前のKONAシリーズからずっと対応していない。これはAJA側の問題というより、Blackmagic Design側が対応するかどうかの問題のようだ。BMDでは自社カードを使って欲しいという事だろう。ただBMDのST2110対応カードは、フルHDまでしか対応していない。
これまでNLEソフトを作っている企業がI/Oのハードウェアまで提供するという例が少なかったため、そのニーズを一手にAJAが引き受けていたという背景もある。このあたりもマーケットの競合がみられる部分だ。
AJAは新しいフォーマットが登場するたびに、かなり早く対応するメーカーである。オーディオのマルチチャンネルIP伝送で知られるDanteが開発したDanteAV用のエンコーダー/デコーダーも、すでに23年のうちに製品化している。
現在ST2110用コンピュータI/Oカードで4K対応のものはほとんど見当たらないが、それは取りも直さず、4Kのライブ対応機器はそれほどニーズがないという裏返しでもある。ネット配信では4K作品の配信も珍しくないが、テレビ放送で常態的に4K放送を行っているのは日本と韓国ぐらいで、世界的にみれば4KのIPライブ対応製品は、需要が少ないニッチ市場である。
とはいえ、テレビ自体はほとんどが4K解像度となっていることに加え、24年パリオリンピックで4Kのライブ需要が喚起されたことなどから、今後は大型スポーツイベントでは世界的にネット上での4Kライブ配信が求められるようになるものと期待されている。
もちろん4Kでは解像度だけでなく、HDR対応も必須だ。そうしたことを踏まえていくと、「OG-ColorBox」「OG-C10DA」「KONA IP25」を点と点で結んでいけば、AJAの狙いが見えてくる。
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