米Teslaは3月20日(現地時間)、米国で販売したピックアップトラック「Cybertruck」のほぼすべてをリコールすると発表した。走行中にステンレス製の外装トリムパネルが車両から外れ、道路上での危険を引き起こし、衝突の可能性を高める恐れがあったという。
Teslaが米運輸省道路交通安全局に提出した書類によれば、リコール対象は2023年11月から25年2月27日までに製造した4万6000台強。同車両のリコールは8回目という。Teslaは、今回の問題と関連する可能性があるクレームが151件あることを認識しているが、衝突や負傷はなかったと説明している。
Teslaは今回のリコールで、パネルの組み立て部品を、耐久性試験の要件を満たす新しいものと交換すると発表。これまで部品の接合に使っていた構造用接着剤は、環境問題の影響を受けやすいことが判明している。新しいバージョンでは、今までと異なる接着剤を利用。補強のためステンレスパネルにスタッドを溶接し、ナットで車体に固定するという。
Teslaは、21日から改良型のトリムパネルを製造ラインで使用し、それ以前に生産された未納車の車両については、納車前に改良部品を取り付けるとしている。
TeslaはCybertruckの納入台数を公表していないが、アナリストの推定によると、リコール対象になった車両は、現在公道を走る車両の大半を占めるという。
今回のリコールはテスラにとって逆風となる可能性がある。同社は激化する競争や老朽化する製品ラインアップ、そして連邦の支出削減を監督するイーロン・マスクCEOに対する反発に悩まされており、同社の株価は25年に入って約半分に下落している。
Cybertruckの需要は24年末には弱まっていた。同車種の売り上げはTesla車全体の総出荷台数(2024年は179万台)のごく一部に過ぎない。
米調査会社AutoForecast Solutionsのサム・フィオラーニ氏は「車体パネルのような物理的部品の不具合で、全生産車をリコールするとなると、Teslaが長年避けてきた品質問題に注目が集まる」と指摘。「企業の評判は築くのに長い時間がかかるが、失うのはあっという間だ」と述べた。
20日夜、マスクCEOはSNSでライブ配信を行ったが、リコールについては触れず、Cybertruckが米道路交通安全局から「5つ星の安全評価」を受けたことを称賛した。同車両を「衝突時に非常に安全」と呼び、投資家に保有株を手放さないよう提案した。
米リコール管理会社BizzyCarによると、2024年にテスラ車両のリコール件数は510万件に達し、米国のリコール件数でトップになった。しかし問題のほとんどはソフトウェアアップデートで解決されている。
米Morningstarのアナリスト、セス・ゴールドスタイン氏は、Cybertruckの販売台数が「Model 3」や「Model Y」に比べて比較的少なかったため、リコールはTeslaの3月期業績に大きな影響を与えないだろうと述べた。
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