アイロボットジャパンは4月16日、ロボット掃除機「ルンバ」のラインアップを刷新した。都内で行われた発表会には苦境が伝えられる米iRobotのゲイリー・コーエンCEOも登壇し「財務基盤の強化策を進めている」とアピールした。
iRobotを巡っては、3月の決算発表や年次報告書(Form 10-K)に「新製品ラインが成功する可能性は十分にあるが、それでも負債を返済する他の手段が見つからないと、12カ月以上事業を継続できない可能性がある」という、いわゆるGC注記(going concern:企業の継続性についての注意書き)を入れたことで注目を集めた。
コーエンCEOは「われわれは財務基盤の強化策を進めている。債務の借り換え、戦略的取引の可能性などさまざまな選択肢を検討している。全てポジティブな動きだ。これらの協議が継続中であることを考慮し、継続能力に関する一文を含めた」と説明。今後、再生プロセスの進行によって「GC注記が消えることを期待している」という。
「財務状況を説明する際に使う言葉には難解なものもある。しかし、iRobotは世界中で通常通り業務を行っている。その証として25年モデルは北米で販売を開始した。iRobotは盤石だ」
共同創業者の一人で長くCEOを務めたコリン・アングル氏の後を継いだゲーリー・コーエン氏は、米Gillette(ジレット)などでキャリアを積み、「再活性化を必要とする企業で働くことに熱意を持っている」という経営者。2024年4月の就任から一年で、経営陣の刷新や製造パートナーとの関係見直しなど矢継ぎ早に改革を進め、新製品は従来より利益率が向上したという。
ラインアップは、日本市場を意識して開発したというエントリーモデル「Roomba 105/205」(3万9400円から)、自動化など先進機能を盛り込んだミドルレンジ「Roomba Plus 405/505」(9万8800円から)、「ルンバ史上最高の吸引力」を誇るフラグシップ「Roomba Max 705」(9万8800円)の3シリーズ9モデル。18日から直販サイトや認定販売店で販売する。
コーエン氏は新製品群を前に「iRobotの歴史の新たな幕開けだ」と自信を見せる。「確かなのは、(iRobotには)再建の基盤となる強力なブランド力があること。れわれにはブランド力、リテールパートナーなどの強みがあり、エコシステムという意味でも、すでに何百万台ものルンバが世界中で使われている。非常に強いプレゼンスだと考えている」。
米iRobotは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のロボット学者たちが1990年に設立。ロボット掃除機という新しい市場を開拓したルンバは世界中でヒットし、日本でもロボット掃除機の代名詞的な存在となった。同社の事業が好調だった2019年から21年にかけて、iRobotの株価は一時124ドル前後まで上昇。22年には世界累計販売台数が4000万台を超えた。
しかし近年は中国企業の台頭による競争激化などで負債が増大。24年1月に米Amazonによる買収契約が頓挫すると、共同創業者で会長兼CEO(当時)のコリン・アングル氏が辞任し、従業員の約31%に当たる約350人を解雇するなど苦境が伝えられていた。現在の株価は1.83ドル(4月16日時点)と最盛期から約95%下落している。
ルンバのiRobot、「企業として存続できるか大きな疑問」
あたりまえになった「ロボット掃除機」 便利だからでは許されなくなる、“次の競争”とは
ルンバ、ふるさと納税の返礼品に 公式整備済みリユース品を“第二の故郷”から
Amazon、iRobotの買収を「EUの承認が得られそうにない」として断念 iRobotのCEOは辞任、大規模リストラも
すべてのリチウムイオン電池の回収を市町村で 環境省「一般廃棄物として自治体が回収するのが“あるべき姿”」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR