典型的なのが「ドコモ口座」問題で、dアカウントの回線にひも付かない「キャリアフリー」アカウントを使って銀行口座とのひも付けを行う「口座振替」の仕組みを利用し、悪意のある第三者が他人の銀行残高をドコモの「d払い」サービス経由で引き出して換金しやすい商品を購入するというもの。
誰でも簡単にdアカウントが作れることを悪用したもので、dアカウントになる前のdocomo ID時代には回線認証に伴う本人確認が実施されていたため、本来は起こりえない現象だった。後にキャリアフリーアカウントでもeKYCのような本人確認が必須とされた。
また「d払い」はたびたび悪用が問題となっており、頻繁にログアウトして回線認証を求める仕組みを導入せざるを得ないなど、一時期使い勝手を悪化させる仕様変更が行われたりした。こうした事象を繰り返し、現在のdアカウントの悪評が蓄積されていったと考えられる。
今回話題に上った「dアカウント」に関するあれこれは、住信SBIネット銀行がドコモ傘下になることでフロントのUI/UXがドコモ関連のアプリへと統合され、加えて認証にdアカウントが必須になるのではないかという懸念から来るものだろう。将来的に可能性がゼロとは言わないものの、筆者の考えでは「住信SBIネット銀行の強みを消すような統合は当面行わない」だ。
ドコモが欲していたのは「さまざまな金融サービスを提供するのに必要なコアとなる銀行口座」だ。給与の振込口座に、ローンを含む各種支払いを行うための銀行口座を自前で持つことで、大量のトランザクションが発生する。
ドコモの契約回線数は24年時点で9000万を突破しているが、仮にアクティブな回線の3割程度の顧客を銀行口座のユーザーで獲得できるとして、すでに国内メガバンクに匹敵する口座数を抱えることになる。これを普段使いの口座としてもらえれば、住信SBIネット銀行がドコモ傘下に入るだけで一気に銀行大手に躍り出ることになる。ドコモとしても、ひも付く金融サービスを次々と提供することでトランザクションの増加による手数料収入も増え、さらに周辺サービスや口座を利用する機会も拡大することになる。
想像にはなるが、ドコモが提供するいずれかのモバイルアプリから住信SBIネット銀行の残高や送金機能が利用できるような仕組みが提供され、表向きは「ドコモの銀行サービス」としてブランディングされた住信SBIネット銀行の既存口座をそのまま利用する形になるのではないか。
こう考える理由として、すでにドコモ内部の顧客管理システムが限界にきており、これを整理しない限り、すでにきちんと動作している銀行サービスにとってマイナスでしかないと思われるからだ。そのため、最初の認証部分だけdアカウント経由だったとしても、銀行口座や住信SBIネット銀行が提供する基本的なモバイルアプリなどの機能はそのまま残ると考えている。
ポイントプログラムについても同様で、Vポイント連携などの機能はそのままに、新たにdポイントが付与されるようなイメージを想像する。ユーザーから見た子会社化後の住信SBIネット銀行は、"ガワ"だけがドコモナイズされた状態で当面は走るのではと予想する。
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