「子どもが見るサイトに性的広告を表示しないで」――世論の高まりを受けて、電子コミックの業界団体が対応に乗り出した。読売新聞などは6月4日、コミック配信大手11社が加盟する日本電子書店連合(JEBA)が、性的表現を含む広告の全年齢向けWebサイトへの出稿を4月末に停止したと報じた。SNSでは「問い合わせてよかった」「ようやく業界が動いた」といった安堵の声が広がっている。
同連合は2018年に、海賊版対策を目的に設立された団体で、「まんが王国」「Renta!」「めちゃコミック」「コミックシーモア」などの運営企業が参加。4月30日に緊急会合を開き、加盟社間で初めて性的広告の配信基準を統一した。全年齢向けを想定した媒体には今後、性的広告は配信しないという。
きっかけとなったのは、日本広告審査機構(JARO)からの情報提供だった。JAROによれば、2024年度に寄せられたネット広告への苦情は604件と前年の2倍超に急増。このうち206件が電子コミックの広告だった。通常は広告主に個別通知を行っているが、苦情の集中を受けて、同連合への初の指摘に至ったという。
日本電子書店連合によると、性的広告に関するこれまでの対応は、「出稿先やユーザーからの個別問い合わせに対し、その都度広告配信を停止する」といったものにとどまっていたという。同連合は「3月に行われた国会での質疑など、社会情勢を踏まえて判断した」と説明している。
国会では3月18日、国民民主党の伊藤孝恵参院議員が、学校のタブレットやゲームサイトでの性的広告表示について「いつまで放置するのか」と追及。
オンライン署名サイト「Change.org」では、「性的なネット広告ゾーニングしませんか?」と題した署名活動も広がっていた。署名は24年9月に開始されたもので、発起人の香川きょうさんは趣旨説明で「インターネット広告業界は性的な広告の自主規制の基準を、テレビや新聞レベルまで上げてほしい。JAROには性的なネット広告も正式な対象として扱い、企業へのフィードバックを行ってほしい」と訴えていた。署名は25年6月時点で10万筆以上を集めており、4日にこども家庭庁に提出された。
JAROは今後も、苦情が集中する広告主や業界団体に対し、情報提供を行う方針だ。同連合に加盟していない電子コミック配信元をはじめ、美容医療、病院、健康食品、オンラインゲームといった分野でも苦情が相次いでおり、すでに日本オンラインゲーム協会とは情報交換を進めているという。
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