南部氏:ただ、いざ製品を出してみると、意外と万人受けする可能性もあるということもみえてきました。例えば、老眼になると細かい作業はしづらくなります。そのために、今まで楽しみにしていた趣味ができなくなってしまったり、あるいは仕事のパフォーマンスが下がってしまったり──そんなユースケースが山ほどあったんです。そういったユーザーの皆さんの声をどれだけ製品に盛り込んでいけるか、そこに挑戦しているところです。
皆さんが待っているのは「遠いところも近いところも自分の目のように見える製品」です。われわれのようにオートフォーカスアイウェアを出す企業は今後もっと増えていくでしょうし、国内でも例えばフレネル液晶レンズを使って「度数が変わるメガネ」を作っているElcyo(エルシオ)さんのような会社もあります。他にも異なる仕組みの液体レンズを作ろうとしている海外の企業もあります。
──競合というより、当面は一緒に市場を作っていく仲間になりそうですね
南部氏:その通りです。各社それぞれ研究開発段階で、つまりは「皆、もっとうまくやらなければならない状況」です。切磋琢磨して技術水準を上げ、今後“オートフォーカスメガネ業界”というものができると思います。
──それは、いつ頃の話になるとみていますか?
南部氏:5年以内には、いわゆるメガネ・コンタクトレンズ市場の中の1カテゴリーとして、一定の市場が形成され始めるとみています。オートフォーカスメガネは、通常のメガネよりも課題の多い方が使うものとして、通常のメガネと併存していくことになるでしょう。
また、医学的検証が必要ですが、オートフォーカスメガネは近視の抑止・抑制効果があるのではないかとも言われています。臨床研究をして、いずれ医療機器として展開する選択肢もあるかもしれません。(近視が社会問題化している)お隣の中国では、近視を回避したい、進行を止めたいという大きなニーズがあり、そこに食い込む余地もあると考えています。
──発表会ではヘルスケア分野への展開も挙げていました
南部氏:はい。例えば、ViXion01Sを試す前にキャリブレーション(ハードウェアをユーザーに合わせて初期設定すること。ViXion01Sではレンズの度数も分かる)を行ったと思います。あれは最初に1回行えば良いものですが、実は目がフレッシュな状態の朝と、疲れ気味の夜では結果に差が出ます。
南部氏:こうしたデータを長期で取ると変化がみえます。結果が悪くなった場合、それが疲れ目による一時的なものか、長期的に目が悪くなっている途中か、あるいは疾患が発生して視力が下がった可能性も否定できません。そこでデータの変化率のようなものを捉え、見つけた場合にアプリ上でアラートを出して眼科での検査を勧める──そんな機能を将来的に実現したいと考えています。
以前、眼科医の方に話を聞いた時、目の病気が進行してから来院する患者さんが多いと悩まれていました。しかし目の病気は早期に介入するとちゃんと直せる可能性も高いです。であれば、早期発見という点でわれわれの製品がお役に立てるかもしれません。
もちろん医療の世界の話ですので、われわれ単体でサービスを行おうとは考えていません。今は医師の方に説明して理解を得たり、学会の人に話を聞いてもらって協力したりといったプロセスが大事だと思っています。まだ会話レベルではありますが「すごく良い」とポジティブに捉えられていて、非常に良いリレーションを築くことができています。
──具体的に共同研究などの予定はありますか
南部氏:まだ詳細はお話できませんが、ある大学の先生とは具体的なお話を進めています。ただ、何をやるにもお金は掛かりますので、今は企画段階といったところですね。
また今の製品はレンズ径が小さいので、多くの人が使える段階ではないと思っています。いずれレンズが大きくなった時に効果を検証することは意義があると思いますので、タイミングとしてはもう少し後になりそうです。他にも中国の眼科医さんから近視抑制について何か一緒にできないかとのお話もありました。チャンス自体はすごくあると思っているので、後は資金次第ですね。
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