今、プラモデルや電子工作が趣味の人や歯科医師など、手元で細かい作業をする人達の間で、密かに注目を集めている電子機器がある。人の眼の代わりにピント合わせをするメガネ型のウェアラブルデバイス「オートフォーカスアイウェア」だ。
これを掛けると、例えば老眼の人が手元のスマホに視線を移しても、すぐにピントが合ってはっきり見える。悩んでいる人には“夢のメガネ”といえるかもしれない。
ただし、現在はレンズ径が小さく視野が狭いためメガネの代替にできない。“アイウェア”と称しているのも、一般医療機器である眼鏡と区別しなければならないためだ。
オートフォーカスアイウェアを手がけるのは、メガネレンズ大手のHOYAから2021年に独立したViXion社(ヴィクシオン、東京都中央区)。6月5日に市販を開始した新モデル「ViXion01S」は、従来機より普通のメガネに近い外観でピント合わせの精度も向上したが、使用している液体レンズ(リキッドレンズ)の大きさは従来機と同じだ。
同社は従来機の発売前から「将来のレンズ径拡大」を目指すと公言していたが、現状はどうなっているのだろうか? ViXionの南部誠一郎社長に詳しい話を聞いた。
──前回の取材時(23年6月)に「今後1〜3年のうちに現在より大きなレンズを使った製品を投入する」とおっしゃっていました。あれから2年。現在の状況を教えてください
南部氏:現在は開発を進めており、製品化のメドは立っていて、プロトタイプもできています。詳しい市場投入時期は言えませんが、そう遠くない将来、今回のViXion01Sに搭載可能な形で提供します。ViXion01Sは、そのような設計になっています。
今は量産に向け、(レンズの)透明度や揺れなど、一番ユーザーが気になる部分について詰めています。レンズメーカーと原材料の配合テストなどを進めていて「あと一息かな」といったところ。2年前の想定からそう大きく乖離(かいり)することなく市場投入できるとみています。
──レンズはどのくらい大きくなりますか?
南部氏:現在のレンズは5.8mm(径)ですが、ターゲットは9mmです。径では3mmほどの拡大ですが、視野角は2.5倍以上になります。例えば、今お使いのノートPC(13インチMacBook Air)くらいなら、まるっと視野に収まると思います(※)。
※現在のViXion01Sでは、キーボードに手を置くとディスプレイ中央はよく見えるが、画面の四隅がぼんやりと黒い円形の視野になる
──実用性は高くなりそうですね
南部氏:ユーザー層も広がるとみています。現在は細かい作業をされる方が中心ですが、より一般化して、日常的に目を酷使する人たちにも適した製品になると考えています。
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