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“着るペルチェ水冷”の実力は? 「ChillerX」を着て畑仕事をしたら、秋を感じた小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2025年07月08日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 7月に入り、メッセージには熱中症警戒アラートがバンバン飛び込んでくる。今年も本格的に暑さ対策が必要な季節がやってきた。

 女子高生の間ではハンディ扇風機は必須商品となっており、屋外スポーツをやる子供達にはネッククーラーリングの差し入れが欠かせない。また屋外作業者の間では空調服も定番である。

 それ以外に、テクノロジーでなんとかするグッズとして、2025年はソニーサーモの「REON Pocket Pro」を紹介したところだが、もう一つ紹介が必要な商品が出てきた。

 6月30日にシフトールから発表された「ChillerX」は、夏場の屋外作業やアウトドア活動を視野に入れたガン冷えガジェットである。25年8月上旬発売予定で、価格は送料込みで3万9900円。

シフトールから登場した「ChillerX」

 シフトールは以前にも、「PebbleFeel」という冷感・温感デバイスをリリースしている。これは仕組み的にREON Pocketに近いものだが、VR空間から制御できたり、公開されたAPIにより外部からコントロールできたりという、ややエンタメ寄りの製品であった。

 一方で「ChillerX」は、「着るペルチェ水冷」みたいな製品である。今回はいち早くサンプルを試用する機会を得たので、その使い心地をご紹介していきたい。

ペルチェによる水冷とは

 REON Pocketはペルチェ素子を使って金属面を冷やし、それを首の後ろに当てることで冷感を得るという仕組みだ。接触面積が小さいため、その主要な目的は体を冷やす、体温を下げるというよりは、冷感を感じさせることで清涼感を得ることである。

 実はペルチェ素子を直接肌に当てるというのは、大変難易度が高い。そもそもペルチェ素子はCPUなどの発熱チップを冷却するために使われるものなので、ほっとくと情け容赦なくガン冷えするデバイスだ。それを肌にくっつけて低温火傷しない温度でちょっとだけ冷たいという状態をキープさせるには、一般のペルチェ素子ではうまくいかないし、その制御も非常に難しい。

 現在は類似商品も数多く出ているが、その道を最初に切り開いたのはREON Pocketであり、この商品が成功したからこそ、比較的穏やかに冷えて制御しやすいペルチェ素子が製造され出回るようになった、という経緯がある。

 一方で「ChillerX」は、ペルチェ素子を使って水を冷却し、その水を循環させるという方式をとった。これを「ペルチェチラー方式」と呼ぶようだ。

 使用するペルチェ素子は2つで、環境温度から最大35°C引き下げる能力を持つ。実際にはベストの内部をかなり長い距離循環させるため、そこまで冷たい水が流れるわけではないが、肌に直接くっつけるわけではないことから、ペルチェ素子の能力を大胆に使う事ができる。

 もともとこのペルチェ水冷方式は、2000年より少し前から自作PCで注目されていた冷却方法だ。ペルチェ素子を使って水を冷却し、その水をパイプを使って循環させ、PCのCPUやボードの熱を吸収する。

 ただこれは一部の好事家には好まれたが、一般に広く普及したわけではなかった。そもそもポンプ音がずっと鳴っているし、エコってなんですかというぐらい電力は食うし、冷却水が漏れたらPC内部が水浸しになってショートするというリスクがあった。クロックアップなどした際に、空冷では耐えきれず熱暴走してしまうところを、水冷で無理やり抑え込みたいという、ハイエンドクロックアッパー向けのシステムであった。

 それを人間の体でやろうというのが、「ChillerX」である。すでに屋外作業用として、水を循環させて冷却効果を得る「冷水ベスト」といった商品は一般用途でも存在する。ただこれはポンプで水をベスト内にグルグル循環させるだけなので、長時間使っていると温くなるという欠点がある。

 「ChillerX」はその循環水をペルチェを使って冷却するため、いつまでも一定温度の水が循環する。冷たさが持続するというわけだ。

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