「天文学的」という言葉も使われるように、天文学と言えば日常とは懸け離れてスケールが大きい世界と言うイメージを抱く人も多いでしょう。実際、地球が砂粒と思えるくらい、非常に巨大な天体が、宇宙にはたくさんあります。
しかし、世の中には天体の原寸大画像が掲載されている……いや、掲載されていた論文もあります。それはヤクブ・ショルツとジェームズ・アンウィンによって2020年に書かれた「もしもプラネット・ナインが原始ブラックホールだったら?(What If Planet 9 Is a Primordial Black Hole?)という論文です。
タイトルの通り、太陽系の外側にあるかもしれないと予測されている天体「プラネット・ナイン」の正体がブラックホールだったらどうなるかを考察した論文です。
通常のプラネット・ナイン仮説では、惑星くらいの質量を持つ普通の天体を前提に議論を行いますが、周辺にもたらす重力的影響は、同じ質量を持つブラックホールであっても変わりません。しかしその他の影響は変わることが予想されるため、その違いを利用して発見や正体の特定ができるかもしれません。そのため、このようなもしもの問いが成立するわけです。
この研究では、プラネット・ナインの質量を地球の5倍であると仮定しています。このとき、ブラックホールの直径は9cmになるため、A4サイズの紙ならば十分な余裕をもって収まります。このことから、この論文のプレプリントでは、補足資料としてブラックホールの原寸大の図を載せていました。
ただし、冒頭で過去形で書いたように、この原寸大ブラックホールの図はプレプリントにのみ掲載されており、科学誌に正式に投稿された際には掲載されませんでした。プレプリントと比較する限り、他の情報はそのまま掲載されているため、残念ながら本番では掲載が認められないユーモアだと見なされたようです。
参考文献
Jakub Scholtz & James Unwin. “What If Planet 9 Is a Primordial Black Hole?”. Physical Review Letters, 2020; 125(5)051103. DOI: 10.1103/PhysRevLett.125.051103; arXiv: 1909.11090v1
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