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16万円の「ガチ冷却ベスト」の威力 医療機器のノウハウが詰まった「アイシングギア ベスト2」レビュー小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2025年08月07日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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実際に使用してみた

 使用前に、まずはベスト内に水を入れるという作業になる。200mlぐらいの水道水の入ったカップを用意しておいて、パイプの途中に吸い込み・排出用のパイプを繋ぎこむ。それらの先端を、水の入ったカップに入れておく。

 電源を入れて水を吸い込み、排出側パイプから出てくれば、水が循環して1周したことになる。そこで電源を抜いて停止し、吸い込み・排出用のパイプを外して全体がループになるようパイプをつなぎ直せばOKだ。

 いつものように、農作業時に使用してみた。装着は、ベストを2回着なければならないので、若干面倒ではあるが、制服を着るということが前提であれば仕方がないところである。

装着したところ。制服を着る必要がないので、直接二重に装着している

 インナーとアウターは流水パイプで繋がっているが、着にくかったら一時的にパイプを外して、装着後に接続すればいいだろう。水漏れ防止対策がされているコネクタなので、頻繁に抜き差ししても水が減るということはない。

 USBコネクタを接続すれば、冷却と循環が始まる。動作音は、ファン音がかなり大きい。これは動作時間を伸ばすために、電力をペルチェの電圧に割くのではなく、空冷ファンのほうを多めに割いたためである。

 よって冷え始めは若干ゆっくりで、冷たさを感じ始めるまでだいたい1分ぐらいかかる。一旦冷え始めると、一定の冷感が続くように感じられる。冷却ユニット側では、水温が15度以下にならないようセンサーで調整されるが、冷感の慣れを防止するため、微妙に温度を上下させているという。

 水冷パッドは、インナーベストの作りがよくできており、全面が体に隙間なく押しつけられる。また先端は脇の下あたりまで伸びているので、背中だけ冷たいという感じではなく、かなり広い範囲で冷感が得られる。

インナーベストの作りがよく、冷却パッド全体が体に押しつけられる

 晴天の夕方ではあったが、気温が32度を超えるなか、約30分の農作業でも汗一つかかない。冷却ユニットとバッテリーで重量は1.8kgぐらいになるが、背中の上の方に背負う感じなので、重量の負担はそれほど感じられない。

 消費電力がわかるポータブル電源に繋いで消費電力を測定したところ、だいたい35W〜38Wぐらいであった。これは環境温度や体温によっても変わってくるだろう。

 実はこの水冷ユニットは、ベストから取り外して別体としても使用できる。つまり置ける場所があるなら、無理に背負う必要はないのだ。実際の使用例としては、フォークリフトのオペレータが、冷却ユニットと電源は車体に固定しておき、インナーベストだけ着用するというケースもある。離れる時は、繋がっている循環パイプをジョイント部で外すだけである。

冷却ユニットはベストから取り外して運用ができる

 これは水冷パッドに対してある程度の圧力をかけて水を封入しているので、背もたれに体重をかけてもパッドが潰れることなく循環できるという特性を生かしたものだ。フォークリフトに限らず、エアコンが使用できないドライバー・重機オペレーター全般にも適用できるだろう。なお水圧を保つため、1週間に1回ぐらいは上記の水の吸い込み作業を行う方がよいとされている。

 会社としては、1人あたり16万円は厳しいと感じるかもしれない。だが厚生労働省から、熱中症対策に対する補助金制度がある。高齢労働者向けの制度なので、60歳以上の労働者が常時1名以上就労しているといった条件があるが、上限100万円まで1/2の補助率なので、これに通れば半額の8万円程度で導入できる。

 今年は10月31日まで申し込みを受け付けている。ただし予算額に達した場合は早めに終了する場合もあるので、申し込みは急いだ方がいい。

 アイシングギア ベスト2自体はMEDIAIDブランドなので医療機器ではないが、医療機器で培った技術が生きている製品だ。フィット感の良さや細かいパーツの作りの良さは、さすが医療機器メーカーの製品である。

 また冷却ベスト部と冷却ユニット・電源部を分けるというアイデアは、椅子に座るタイプの労働にも適用できるほか、一式全部を身につけなくていいことから、紐付きにはなるが軽装備でいいというメリットもある。今後いろいろな展開が考えられそうだ。

 この炎天下の中、制服を着て屋外作業を行なう方は、どうしても社会には必要である。くれぐれも熱中症対策を怠らず、暑さ対策を行なってほしい。

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