帝国データバンクが8月15日に発表したアニメ制作業界調査によると、2024年のアニメ制作業界の市場規模は過去最高を更新した。大型作品のヒットやライセンス事業の好調がけん引した一方で、業績が悪化した元請業者は6割を占め、制作のコスト増やアニメーター不足が「利益なき繁忙」を招いているという。
アニメ制作業界の市場規模(事業者売上高ベース)は、前年を4.0%上回る3621億円と過去最高を更新。テレビ・映画・動画配信サービスなど複数のプラットフォームで需要がおう盛だった他、元請制作では二次利用を含むIP事業が好調だった。25年のアニメ制作市場は24年を上回ること予想している。
各社の業績を見ると、直接制作を受託・完成させる「元請・グロス請」の平均売上高は27億4900万円と過去最高を更新。だが損益を見ると「増益」が40.0%にとどまり、「減益」(25.5%)、「赤字」(34.5%)を合わせた「業績悪化」は60.0%を占めた。
売上面では、制作収入に加えて、VODサービスを経由した過去作品の配信、キャラクターの二次利用による版権収入、1話あたりの制作単価の上昇などが寄与したが、それを上回るコスト高に直面。外注コストの高騰やアニメーターの自社雇用による人件費の増加、増床による賃借料の増加など維持管理コストも膨張した。
下請としてアニメ制作に携わる「専門スタジオ」の平均売上高は4億3800万円となり、4年連続で前年を上回った。損益も改善し、「赤字」は33.3%と前年から9.2ポイント減だった。
同社は「制作会社では売上高の増収ペースを上回る制作コストの高騰や人件費の増加、人材不足に伴う制作遅延といった状態が鮮明となり、コスト増を価格へ転嫁できない『利益なき繁忙』状態へ陥りつつある」と指摘。適正な賃金の支払いを含めた労働環境の抜本的な改善策が必要だとしている。
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