ガールズバンドをテーマとしたアニメがここ数年ブームとなっている。25年1月から放送・配信されたTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』(バンドリ! アヴェムジカ)もその1つだ。ただ、この本作はほぼ全編がフル3DCGアニメで制作され、X(旧Twitter)の世界トレンドでもたびたび1位を獲得し、キャスト自らが舞台にあがるライブも発売即ソールドアウトになるなど、数あるガールズバンドアニメの中でも、際立った存在感を放っている。
前作TVアニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」(バンドリ! イッツマイゴー)との連作となっており、異なる学校に通うメンバーの2つのバンドを巡る複雑な人間関係が描かれた「Ave Mujica」。登場人物たちは様々な課題を抱え、クライマックスを迎えつつある取材時点の最新話(#10:第10話の意)でも、その着地点は見えず、視聴者はみな物語の行く末を固唾を飲んで見守っていた。
10周年を迎えたバンドリ! プロジェクトのなかでも異色となった本作が、どのように生まれたのか? メディアミックス型のプロジェクトでありながら、IT色の強い制作現場構築の過程など、監督・制作会社代表に詳しく話を聞いた。
――もうすぐクライマックスを迎えようとしていますが(取材日は#10放送後の3月10日)、Xでも大きな反響となっています。まず今の受け止めを聞かせてください
柿本:まず驚いています。バンドリ!はこれまで既存のお客さんを多く抱えたシリーズだったのですが、「It's MyGO!!!!!」「Ave Mujica」ではその客層を拡げると同時に、新しい方向性を打ち出すことを目指しました。ただそれは必ずしもこれまでのお客さんがついてきてくれるということを意味しませんので、まさか日本のみならず世界中の方に受け入れていただけることになるとは思ってもいませんでした。
またバンドが演奏するジャンルも、MyGO!!!!!がパンク系の間口の広い音楽だったのに対して、Ave Mujicaはメタル系で間口も比較的狭く、音楽人口そのものが少ないのです。物語の複雑さも増していますし、どれだけの方がついてきてくれるだろうと思っていましたが、おかげ様で「It's MyGO!!!!!」から更に増えたと聞いています。
柿本広大
アニメ演出家、監督。 サンジゲン制作のアニメーション作品には「009 RE:CYBORG」(2012/神山健治監督)で初めて演出として参加。 続く「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」(2013/岸誠二監督)では助監督をつとめ、この作品への参加が縁となり、サンジゲンでの全編3DCGアニメーションに制作が移行した「BanG Dream! 2nd Season」以降の同シリーズの監督・総監督等をつとめることになる。 「BanG Dream!」シリーズ以外での監督作品には「刀使ノ巫女」「菜なれ花なれ」など。2025年夏に「神椿市建設中。」が放映予定。
――想定外とも言える状況であるわけですね。「It's MyGO!!!!!」の最終話でも「Ave Mujica」の物語がはじまっているような構成になっていましたが、そのあたりのギャップを監督自身もかなり気にされていたことの表れでもあると
柿本:そうですね、真逆の方向性で作っていこうと思っていたので。「It's MyGO!!!!!」は音楽性にポピュラリティがあるので、間口は広くなるだろうなと。でも「Ave Mujica」は内容がより深く、やや難解になっているし、脚本上のトリックもふんだんに入れているので、強めに篩(ふるい)が掛かっていくだろうなと考えていました。でも視聴者の皆さんの反応を見ていると、物語を振り返りつつ、他の方と疑問や考察を共有するといった楽しみ方をしてくれているようですね。
――心配とは裏腹に非常に良い流れになったわけですね。松浦さんはいかがでしょうか?
松浦:作っている時から制作陣が手応えを感じているようには受け止めてました。特に脚本はすごい時間を掛けてましたからね。企画的に「掛けることができた」というのもあるんですけれども。僕も脚本会議は最初の頃は出ていたのですが、「これは面白くなりそうだから、あとで完成映像を楽しむ事にしよう」とスタッフに任せて途中で出るのを止めてしまいました(笑)。そして、時がたち白バコ(完成映像)が放送前にやってくるわけですが、もう面白くて「It's MyGO!!!!!」も「Ave Mujica」も何回も見てました。
松浦裕暁
2006年株式会社サンジゲン設立。2011年サンジゲンを含む5社をグループとした株式会社ウルトラスーパーピクチャーズを設立。さまざまな作品で3DCGプロデューサーを務め、3DCGで作るリミテッドアニメーションという新しいアニメの表現を確立していく。現在はクオリティーと工数管理の両立を目指し、より働きやすいスタジオを創るべく、制作管理システムの開発に力を注いでいる。
柿本:「It's MyGO!!!!!」の#1を見た松浦さんから速攻で「面白い!」ってLINE来ましたからね(笑)。
松浦:毎回続きが待ちきれなくて、こんなに面白いんだったら俺も脚本会議出ておけば良かったって思いましたよ(笑)。なかなか制作に携わっていてこんなに新鮮な気持ちで映像を見るコトってないですからね。で、この面白さはきっと伝わるはずだと僕は確信していました。実際、放送開始後ネットの反応を追いかけて行ったら、反響が話数を重ねるごとに増えていき、「Ave Mujica」の#3、#7、#10は物語としての仕掛けがある回なので、僕もネットの反応をリアルタイムで調べて「そうだよね、そう反応してくれるよね」と。その拡がりを目の当たりにしていました。
「It's MyGO!!!!!」も#4、#5あたりでネット上でも「どうも様子がおかしいぞ」という反応が湧き上がって、僕は「これは大ヒットになる可能性大だから、ここからの世の中の反応をしっかり見ておくように」と全社に号令を掛けました。こんな様子をリアルタイムで見られる機会って限られていますからね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR