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アニメ「Ave Mujica」制作の舞台裏――監督と制作会社代表に聞く、“圧倒的な内製化”がもたらしたものまつもとあつしの「アニメノミライ」(6/6 ページ)

» 2025年04月18日 11時00分 公開
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革新の連続体としてのアニメ制作

――最後にこれからのサンジゲンの方向性や、クライマックスを迎えるTVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」の視聴者やバンドリーマーの皆さんへのメッセージをお願いします

松浦:人気が出てしまって、この先、制作スケジュールがさらに埋まっていくなと(笑)。これは僕もまだまだ作り続けないといけない。もちろんそれは楽しいし、嬉しいことなんですが。「It's MyGO!!!!!」「Ave Mujica」の続編シリーズの制作も決まっていますし、全く新しいものだってあり得るかなと思っていますし、もうその準備ははじめています。

 僕たちは新作ごとにクリアすべきテーマを決めています。「It's MyGO!!!!!」「Ave Mujica」のときは「CG臭さ無くそう!」だったわけですが、常に「これまでになかったやり方でアニメを作りたい」と思ってます。これからも今日お話ししたような改善は続けて行くことになるでしょう。

 実はモデリングの工程は今後減っていく方向になっていくと思っていて、既にアセットとして購入できるものも増えましたし、サンジゲンにも1万5000を超えるライブラリがあるので、ゼロから作るということはほとんどありません。もっとも作業が大きくなるのはキャラクターの髪の毛の表現で、その次にディティールの多い洋服だったりするのですが、顔についてはすごく早く完成させられるようになっています。

 AIの進化もありますので、今後モデラーの需要は減っていくと思ってますが、それはネガティブなことではなくて、ツールやライブラリはどんどん使った方が良いし、そこにアレンジを加えられる人の需要はむしろ逆に高まっていくと思います。

 そういうビジョンもあって、サンジゲンでは次の「GUILTY GEAR STRIVE: DUAL RULERS」からは、制作ツールを3DSMaxからblenderに完全移行しています。オープンソースのツールを用いることによって、プラグインを自社で開発するなどより新しい作り方ができると考えているからです。ここに3DCGアニメの未来があるなと考えています。

 僕がサンジゲンを創業した2006年には、アニメ制作はスタジオシステムが主流になっていて、作品毎にスタッフが入れ替わるのが当たり前でしたが、サンジゲンはそれに逆行するように内製化とそれを支えるインフラ整備を進めてきました。それが一つ実を結んだのが、本作だと捉えていますが、これからも変革は進めていきたいですね。

柿本:ずっと会社に興味を持ち続けている社長って偉いなと思います(笑)。作品は終わりがありますが、会社は終わりがないですから。松浦さんは「もっとこうしたい」というエネルギーがすごいし、そこにちゃんとコストをかけてくれるのが有り難いです。効率化の結果として、クオリティーもどんどん上がってきていますしね。

 アニメは、デジタル化が始まったときにその波についていけないクリエイターと、なんとか乗りこなした人とで差がついてしまって、しかも変化の間隔はどんどん短くなり、3DCGの次はAIという具合になっています。とにかくあがき続けていかないと、沈んでいってしまう。ですので、作り方も日々変わっていく方が正しいと思っています。アニメ業界全体に言えることですが、同じやり方では作れるものが減っていきますから。

 バンドリ!もアニメ「2nd Season」「3rd Season」、劇場版とアップデートを重ねて、今回の「It's MyGO!!!!!」「Ave Mujica」はいわば大型アップデート、車でいえばフルモデルチェンジにあたるような作品です。もちろん「前のモデルの方が良かった」という人もいると思うので、そちらも引き続き楽しめるようにコンテンツは続きますので、シリーズを引き続き楽しんでいってもらえたらと思っています。

――作品だけでなく、アニメ制作の在り方としてもフルモデルチェンジ=革新だったなと今日のお話を通じてよく分かりました。「新型車」には驚いたファンも多かったと思いますが、私も含め多くの人がその乗り心地を楽しんだはずです。今日はお忙しい中、ありがとうございました

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