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ハッピーセットで“利益が出る”──なぜ人々はポケモンカードを欲しがるのか? 投機商品として狙われるワケ

» 2025年08月15日 19時15分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 日本マクドナルドは8月15日、ハッピーセット「ポケモン」第2弾の提供を始めた。大混乱を呼んだ第1弾の反省から、3セットまでの購入制限を設けてのスタートとなったが、SNS上では「思ったより空いている」「想像以上にガラガラ」などの声が上がっている。どうやら、限定特典のポケモンカードの配布がないことが影響しているようだ。

ハッピーセット「ポケモン」のおもちゃ概要

 ハッピーセット「ポケモン」の第1弾が始まったのは8日。ポケモンモチーフのおもちゃが付く内容に加えて、8月9〜11日には限定特典としてポケモンカードを数量限定で配布するとしていた。しかし、マクドナルドの予想を超える多くの客が殺到し、転売目的とみられる大量購入によって1日でカード配布は終了。店内や周辺道路の混乱、食品廃棄の問題などもあって、SNSではマクドナルドの対応に多くの批判が集まった。

 それらの対応策として15日からは購入制限を厳しくした他、「ルールや、マナーをお守りいただけないお客さまのご購入はお断りします」などとも表明していた。しかし、いざ15日になってみると、第1弾ほどSNSでは話題になっていない状況だ。ここまでポケモンカードに人気が集まるのはなぜなのか。

500円でハッピーセットを買っても“利益が出る”

 ハッピーセット第1弾では、1セット購入するごとに2枚のポケモンカードを配布していた。オリジナルイラストの「ピカチュウ」のカード1枚と、全5種のランダムから1枚という内容だ。このうち、ランダムで配布するカードは既存のカードとほぼ同じもので、イラストにマクドナルドのロゴが付く点しか違いはない。

ハッピーセットで配布したポケモンカード

 一方、ピカチュウのカードはイラストが描き下ろしで、このキャンペーンのみで入手できる特別なものとあって人気を集めている。一部のカードショップではX上で、ピカチュウのカード1枚・1500円、未開封のカードパックの状態ものだと2000円で買い取ると告知しているのを確認できる(15日時点)。

 マクドナルドではハッピーセットを510円から販売している。そのため、510円でハッピーセットを買っても、ピカチュウのカードたちを下取りに出せば、2000円-510円=1490円の利益を出せてしまうわけだ。もちろん、純粋に限定カードやおもちゃが欲しいと思う人もいたはずだが、それに加えて“利益のためにポケモンカードを買う人たち”も混ざり、多くの人が詰めかける事態になったと考えられる。

発売当時の“590倍超”の価値が付くカードも

 ハッピーセットを巡っては、5月にも「ちいかわ」「マインクラフト」とのコラボ商品を発売した際にも、多くの客が殺到し、早期に販売を終了する事態になっていた。その際、メルカリなどのフリマサイトには、おもちゃ4つセットで2000円以上の値段を付けた出品が相次いだ。今回のポケモンカードはそれ以上に高値で取引される事態となっている。

 これはポケモンカードを“投機商品”として扱い、利益を狙う人々が増えていることに起因する。ポケモンカードが発売されたのは1996年。さまざまな商品を販売してきたが、その中には現在は入手困難なカードも多くあり、市場ではプレミア価格で取り引きされている。

 例えば、ポケモン社が2016年1月に発売した「ポケモンカードゲームXY BREAK スペシャルBOX メガリザードンXのポンチョを着たピカチュウ」は、カードパックやグッズなどを収録したセット商品だ。その限定特典カードとして「ポンチョを着たピカチュウ(メガリザードンXver.)」も封入し、当時は2500円(税抜)で販売していた。

「ポケモンカードゲームXY BREAK スペシャルBOX メガリザードンXのポンチョを着たピカチュウ」

 現在、この特典カードがいくらで取引されているかというと、カード販売の大手であるカードラッシュでは、未開封品で148万円で販売中だ。実に発売当時の592倍の価格が付いていることになる。ここまで高騰した理由は、すでに正規販売が終了しているため市場に出回る在庫が限られていることに加え、イラストの人気も高く、コレクションとして求める人も多いことが挙げられる。

148万円まで高騰したピカチュウのカード

 このように、ピカチュウなどの人気ポケモンのカードや、入手が難しいもののはコレクション需要が高く、それ故に高値で取引される場合がある。ここに目を付け、現金をポケモンカードに変えて、投資する人が存在するのだ。ハッピーセットについても、ポンチョを着たピカチュウのように“いずれ高値が付く”とみて、購入した人がいるのかもしれない。

 現在、ハッピーセット以外でもポケモンカードの人気は高く、多くの新商品が抽選販売となる状況が続いている。そんな中で起きたハッピーセットの転売問題。これが本当に「想定外」だったとしたら、マクドナルドの社内にも問題がありそうだ。

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