ネット上のコンテンツのライセンスと報酬をAI時代に対応させる新たな枠組みとして、「RSL標準」と「RSL Collective」が9月10日(米国時間)に設立された。両者は、AIシステムが無許可かつ無償でコンテンツを利用する現状を是正し、クリエイターやパブリッシャーが公正な対価を得られる環境を整えることを目的としている。
RSL標準は、RSSを基盤にしたオープンかつ分散型のプロトコル。robots.txtにライセンス条件を機械可読な形で追記することで、AIによる利用時の補償を指定できる。無料、帰属表示、サブスクリプション、ペイ・パー・クロール、ペイ・パー・インファレンス(AIが応答を生成するごとに報酬を支払う方式)といった多様なモデルに対応し、暗号化を通じて有料記事や書籍などの非公開資産も安全にライセンスできるという。
RSL CollectiveはRSLを運営するための非営利の集合権利組織として、AI企業からの報酬を一括交渉・徴収・配分する。参加は無料かつ非独占的で、パブリッシャーは自サイトを登録し、robots.txtに条件を追加するだけで利用できる。
背景には、AIによるコンテンツの大量利用がWebの経済的基盤を揺るがしている現状がある。O’Reilly Mediaのティム・オライリー氏は、RSSがかつてWeb情報エコシステムを支えた一方で、現在ではAIがコンテンツを吸収し、制作者に補償を行わない状況が広がっていると指摘する。Mediumのトニー・スタブルバインCEOも「AIは盗まれたコンテンツの上で動いている」と強調しており、ルールの刷新が不可欠と主張する。従来のrobots.txtによる「許可・不許可」の制御では不十分であり、ライセンスを前提とした新しいインフラ層が求められている。
この枠組みは、パブリッシャーやクリエイターにとって公正な報酬と利用条件の明確化を実現するものになる可能性がある。一方、AI企業にとっても、インターネット規模でシンプルかつ自動化されたライセンスを利用でき、利用状況に応じた柔軟なコスト調整が可能になる利点がある。
RSL Collectiveの技術運営委員会(TSC)には、RSSの共同著者であるエッカート・ワルサー氏やオライリー氏、(米国の)YahooやFastlyなどの代表者が名を連ねる。支援企業には、Reddit、Yahoo、O’Reilly Media、Mediumなどが含まれ、RSL標準単体でもFastlyやQuora、ADWEEKといった企業が名を連ねる。
RSL標準では、米Cloudflareが提供するクロールごとの支払いシステムとは異なり、botのサイト訪問をブロックすることはできない。その目的は、botを単純にブロックすることから、AI利用ケースに対してライセンス条件を設定することへと進化させることにあるとしている。
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