欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は9月12日(現地時間)、米Microsoftのオンライン会議用アプリ「Teams」の提供をめぐり、同社が提示した競争上の懸念に対処するためのコミットメントを受け入れる決定を下したと発表した。
これにより、MicrosoftのコミットメントはEUの独占禁止法に基づき法的に拘束力を持つこととなる。これは、TeamsをOffice 365およびMicrosoft 365スイートに抱き合わせ販売していたことに関する委員会の懸念に対処するものだ。
結果として、本件に関して2020年に苦情を申し立てた米Slackと独alfaviewは、苦情を取り下げた。
欧州委員会は2023年7月、Slackからの苦情を受け、MicrosoftによるTeamsの提供に関する行動がEU競争規則に違反していないか評価するための正式な独占禁止法調査を開始した。その結果、Microsoftが業務用SaaS生産性アプリの全世界市場において支配的地位にあると判断。さらに、MicrosoftがTeamsを抱き合わせて提供していたことが独占的地位の濫用に当たるとの見解を示した。
Microsoftは2023年と2024年に流通方法の変更(Teamsを含まないスイートの提供など)を行ったが、委員会の懸念を解消するには不十分であると判断されていた。
これらの懸念に対処するため、Microsoftは複数のコミットメントを提案した。最終的なコミットメントとして、MicrosoftはEEA域内の顧客に対し、Teamsを含まないOffice 365およびMicrosoft 365スイートを、Teamsを含む対応スイートよりも大幅に低い価格で提供することに合意した。Teams単体の価格を基準として算出されている既存の価格差(割引額)を、さらに50%拡大する。また、長期ライセンスを持つ顧客がTeamsを含まないスイートに切り替えられるようにし、Teamsの競合他社がMicrosoft製品との相互運用性を確保できるようにすることや、顧客が自身のTeamsメッセージデータを競合ソリューションに移行できるデータポータビリティを提供することも約束した。
さらにMicrosoftは、全世界でのスイート提供と価格設定をこれらのコミットメントに合わせ、従業員向けのTeamsなしスイートの提供を継続し、その価格をさらに引き下げることを決定した。
これらのコミットメントは、相互運用性とデータポータビリティに関するものを10年間とする他は、7年間にわたって有効となる。その履行は監視受託者によって定期的に監視され、競合他社とMicrosoft間の紛争が発生した場合には、受託者が仲介を行い、必要に応じて迅速な仲裁が適用される。
Microsoftがこれらのコミットメントを順守しない場合、委員会はEU独占禁止法違反を証明することなく、全世界年間売上高の最大10%の罰金、または不履行の日数に応じた日次売上高の5%の定期的な違約金を科すことができる。
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