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ロジックじゃない、感覚で創る――「アポカリプスホテル」誕生の軌跡、CygamesPictures竹中代表に聞くまつもとあつしの「アニメノミライ」(3/4 ページ)

» 2025年09月26日 11時00分 公開

「業界からの称賛」と「ビジネスの現実」

――作品が世に出て、商業的な手応えも感じましたか?

竹中:いえ、正直に言うと、ビジネス的に分かりやすい手応えを感じる瞬間はなかったですね。僕自身、「これは面白い」と思いながらも、自分の感覚をそこまで信用しているわけではないので、「上手くいけばいいな」くらいの感覚でした。オリジナル作品は、放送開始直後に大規模な宣伝を打っても、すぐにはファンがついてきにくいですし。今回は、大規模な宣伝を打った訳ではないですが、オリジナルの難しさを改めて感じました。

椛嶋:強力なライバル作品があったり、放送エリアが東京に限られていたりと、宣伝に苦戦した部分があったのは事実ですね。一方で、放送前のタイミングより、CygamesPicturesさんによる次のオリジナル企画ということで期待値も大きく、一緒に本作を盛り上げたいとお声がけいただけたりもしまして、タイアップや商品化企画も多く実現できたりました。

――SNSでの反響などはいかがでしたか。

椛嶋:竹本先生がキャラクター原案を担当されていることの注目度はとても高かったです。特に、作品としての魅力が伝わってきたと感じたのは、第4話「食と礼儀に作法あり」のアクション回が終わったあたりです。「アポカリプスホテル」は1話の中で数十年の時間経過があったりしますが、そのスケール感の一方でホテルを日々切り盛りするロボット達に、毎話どこか感動できるところがあったり、本作の魅力が伝わってきたと思いました。海外では、クランチロールとビリビリで独占配信展開したのですが、ユーザー評価でクール1位をいただくこともできました。CygamesPicturesさんによるアニメーションの美しさにも沢山の反響がありました。

――一方で、業界内での評価は非常に高かったと伺っています。

竹中:本当にありがたいことです。そもそもこの企画に素晴らしいクリエイターたちが集まってくれたのも、「キャラクター原案・竹本泉先生」という言葉が持つ力が非常に大きかったんです。普通、オリジナルアニメはクリエイターにとって参加の動機が弱いのですが、「竹本先生がキャラクター原案だったら!」と、業界に数多くいる先生のファンが参加してくれました。

――その「ファン」というのは、やはり竹本先生の作品をリアルタイムで読んでいたベテランの方々が中心だったのでしょうか。

竹中:いえ、そうでもないんです。もちろんベテランの方もいましたが、若いクリエイターも多く参加してくれました。昨今では珍しい、少し頭身の低いキャラクターがダイナミックに動くアクション作画をやりたい、と面白がってくれる層が、世代を問わずいたんだと思います。

アポカリプスホテルぷすぷす書影 ©AHP/T・T

――最近そういった作品、減りましたものね。世代を超えたクリエイターが集結した、と。そうして作られた作品だからこそ、業界内でも特に注目されたのかもしれませんね。

竹中:はい。そうして熱意ある皆さんと作った作品なので、放送後に同業の方々から「『アポカリプスホテル』を見ていました」「次があったらぜひ」と声をかけてもらえるのは、本当に嬉しいですね。

椛嶋:業界の方々からも、「今期で一番好き」と言っていただけたり、「オリジナル企画に挑戦したいと思えた」といったポジティブなことを本当に多く言っていただきました。

竹中:中国のbilibili動画で人気が出て、ランキング1位になったのも、そうした現場の熱量が海を越えて届いた結果なのかなと感じています。

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