――アクションシーンもそうですが、作品全体がきわめて高品質であったと感じます。CygamesPicturesの制作体制や強みはどのように生かされたのでしょうか。
竹中:他のスタジオ同様、うちも内製化を進めているのですが、その動きはもう5、6年前からずっと仕込んできたものです。今では社員の半分弱がアニメーターで、そのうちの6、7割が生え抜きのスタッフです。この作品では、美術以外のほぼ全てのセクションを社内で担当しており、各部署が密にコミュニケーションを取りながら、自分たちがやりたいことを形にできたと思っています。
――それだけ多くのクリエイターを社内で抱える中で、どのスタッフをどの作品に参加してもらうのか、どのように決めているのですか。
竹中:多くの会社では、プロデューサーの意向でチームが組まれると思いますが、うちでは社員アニメーターの作品決定権は、プロデューサーではなく、作画を管理する専門の担当者が最終的に持っています。もちろんプロデューサーやアニメーター本人の希望も聞きますが、時には本人がやりたいものではなく、そのクリエイターの次の成長に繋がる作品を任せることもあります。プロデューサーの希望を叶えない時もある、ということです。
――わかりました。今後、スタジオとしてはどのような作品を手がけていきたいですか。例えば「アクションに強い」や「かわいい女の子の作品が得意」といったカラーを付けていくお考えは?
竹中:むしろ「カラーのない会社」にしたいんです。「あの会社、次はなにをやってくるか分からないな」と思われるくらいが丁度いい。特定のジャンルに特化すると、クリエイターが違う作品をやりたくなった時に、スタジオに居続ける理由がなくなってしまう。色々なことに挑戦できた方が、結果的に個々のスキルアップにも繋がると考えています。
――『アポカリプスホテル』とは別に、椛嶋さんがプロデューサーを務めている『光が死んだ夏』もCygamesPicturesが制作しています。こういった女性にも人気がある作品を手がけるのも「カラーのない会社」という理念に繋がっているのでしょうか。
竹中:そうですね。ちょうど女性にも見てもらえる作品を探している、と話していたタイミングで、このお話が来たんです。社内の女性のアニメーターからも「この作品はすごい」という声が上がっていたので、ぜひやろうと。自分の目線ばかりで作品を選んでいると、どうしても偏りが出ますからね。
――かつて「アニメ業界を変革する」と語られて(ファミ通.com)から約10年が経ちました。会社の、そして業界の未来については、今どのように見ていらっしゃいますか。
竹中:自社の変革という意味では、ラストチャンスだと思っていたタイミングで会社をある程度は軌道に乗せることができ、理想の制作体制を構築していくといった面では、想定よりうまくいっていると感じています。業界全体で見ても、個人的には「アニメ業界の未来はかなり明るい」と思っていますね。
ただ、この先の10年はもう僕以外の誰かに企画を考えてほしいです。僕が作るものが、全く時代に刺さらなくなるタイミングが必ず来ると思っていますから。そうなったら、僕は若い子たちが作るもののサポートに回る予定です。むしろ僕が「つまらないな」と思うような企画で、ヒットを飛ばしてくれたら、CygamesPicturesの可能性はもっと広がっていくはずです。
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