2025年の春アニメで異彩を放ったのがオリジナルアニメ『アポカリプスホテル』。原作というヒットの指針なきオリジナルアニメの製作は厳しい道のりだが、なぜCygamesPicturesは『アポカリプスホテル』のような意欲作を世に問い続けられるのか。
『ゾンビランドサガ』などオリジナル作品を世に送り出してきた、同社代表・竹中信広氏、そして本作のプロデュースに奔走したCyberAgent アニメ&IP事業本部・椛嶋麻菜美氏のお2人に詳しく話を聞いた。
あらすじ
人類がいなくなり、長い年月が流れた地球。日本の首都・東京の銀座にあるホテル「銀河楼」では、ホテリエロボットのヤチヨと従業員ロボットたちが、オーナーの帰還と、再び人類のお客様を迎える時を待っていた。が――100年ぶりにやってきたお客様は、地球外生命体だった。次々に訪れる彼らの目的は、宿泊か、侵略か、はたまたどちらでもないのか……「銀河楼」の威信をかけたヤチヨたちのおもてなしが、今、始まる――
――令和の時代に竹本泉先生の、しかもオリジナル作品がアニメで見られるということに、まず衝撃がありました。企画の立ち上がりの経緯について、改めて振り返っていただけますでしょうか。
竹中:この企画はもともと、Cygamesの別のプロデューサーとライデンフィルムの里見さん(ライデンフィルム代表取締役・里見哲朗氏)が中心となって進められていました。私が引き継いだ時点で既に竹本泉先生のラフが数点と、『アポカリプスホテルへようこそ(仮)』という大まかなプロットも存在していました。里見さんからは、「竹本泉先生のデザインだけは生かしてほしい。それさえ守ってくれれば、中身は好きに変えてもらって構わない」というお話をいただいた上で、企画を練り直すことにしました。
当初の企画コンセプトは、終末世界で『21エモン』をやってみようという、ドタバタコメディの企画でした。アンドロイドが経営するホテルに、長命種の吸血鬼や喋るユーグレナがいるところにさらに宇宙人がやってくる、といった内容でした。
個人の感覚ですが、新規のオリジナルアニメとしてはもう少し間口を広げたいなと感じました。そこで、脚本家の村越さんに「こういう企画なんだけど、助けてくれないか」と声をかけて、2人でアイデアを出し合いながら、今の形に再構築していったのが、企画再起動の第一歩でした。
その後、企画に愛着が出てくるには十分な時間を費やしたタイミングでコロナ禍になってしまいました。アニメ制作が業界中で停滞していく中で、ライデンフィルムさんもスケジュールを調整がしづらい状況になっていました。そのころには、絶対に完成させたいという気持ちが生まれていたので、里見さんに相談して、CygamesPicturesで制作をさせていただくことにしました。
――なるほど、そういった経緯でしたか。
竹中:一方で、そうやって練り直している時から、ビジネス的にはかなり厳しい作品だなって思っていました。実際に、Cygamesの役員会の反応は厳しかったです。そこで、同じグループ会社のサイバーエージェントにいる椛嶋さんに幹事会社を引き受けてくれるようお願いしたという経緯があります。
椛嶋:相談を受けて竹中さんからプロットをいただいて読んだら、すでにとても面白くて。竹本先生原案によるキャラクターデザインも、リアルタイム世代ではない私から見ても、どこか懐かしいのに新しい、今の時代だからこそ唯一無二の企画になると感じました。ただ同時に、やはり営業面では苦戦するだろうな、とも思いました。原作ものに比べて、オリジナルはなかなか事前評価が難しいので。
それでもこの企画をやりたいと思ったのは、竹中さんが常々「オリジナルに挑戦し続けることが、制作会社の価値になる」と話されていたことを応援したい気持ちもありつつ、私自身も、この作品はCygamesPicturesの今後に絶対に繋がるものだと確信して、実現に向け一緒に走ろうと覚悟を決めました。
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