「Aさんの“痛みレベル50”は、Bさんにとってどのくらいの痛みなのか」――10月14日に幕張メッセで開幕したテクノロジーイベント「CEATEC 2025」で、NTTドコモがそんな比較を可能にする技術を展示している。
展示している技術は、測定した体験者の脳波から痛みの度合いを測定し、受け手の痛みの感じ方に合わせて強度を変換・再現するものだ。痛みの測定および数値化には、大阪大学発のスタートアップ企業PaMeLa(大阪府豊中市)が開発した測定技術を用いており、ドコモの「人間拡張基盤」を通じて感覚の個人差を調整する。これにより、相手に対して“同じ感じ方”で痛みを共有することが可能となっている。
会場では、被験者の腕に装着したバンドを通じて45度前後の熱刺激を与え、脳波をもとに痛みの強さを「レベル56」などの数値でモニター上に可視化するデモを実施。会場では実施していないが、年齢や個人によって変わる“痛みの感じ方の違い”に応じて刺激温度を調整し、他人に同等の「レベル56」程度の痛みを伝えることも可能という。
ドコモは2023年に、人間拡張基盤を用いた感覚共有のプラットフォーム技術「FEEL TECH」を発表。アスリートの動きなどを体験可能な「動作共有」をはじめ、「触覚共有」「味覚共有」などの技術を発表している。今回の「痛みの共有」はその新たな応用例で、「言葉では伝えづらい感覚を、適切に相手に伝えることができれば、より理解し合える社会が作れるのではないか」と開発担当者は話す。
想定する用途は、「医師に痛みの程度を伝える」といった医療現場での診断・リハビリ支援の他、XRやゲームにおける没入体験の拡張など。この他、将来的にはSNSでの誹謗(ひぼう)中傷やカスタマーハラスメントによる“心理的ダメージの再現”も検討したいとしている。
「痛みを共有」する技術、ドコモなど開発 感じ方の“個人差”踏まえた調整も
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