ストックフォトサービスを提供する米Getty Imagesが英Stability AIを著作権侵害などで英高等法院に提訴した裁判で11月4日(現地時間)、ジョアンナ・スミス判事は、Stability AIの画像生成AI「Stable Diffusion」のユーザーが生成したGetty Imagesのウォーターマークに関する商標権侵害でGetty Imagesが「部分的に」勝訴したとの判決を下した。この判決は、原告側が訴訟の中心に据えていた二次的著作権侵害の主張が棄却された一方で、旧モデルにおける商標権侵害が認められたため、「範囲が極めて限定されている」と評された。
この訴訟の最も重要な争点の1つ、Stability AIのAIモデル自体が著作権法上の「侵害複製物」に当たるというGetty Imagesの主要な主張は棄却された。裁判所は、Stable DiffusionのようなAIモデルは、学習データとなった著作権作品をモデルの内部に保存または複製しないため、著作権法上の「侵害複製物」には該当しないと判断した。この判断により、Getty Imagesが求めた、著作権侵害に基づく追加損害賠償の請求も退けられた。
一方で、商標権侵害については部分的に認められた。具体的には、Stability AIが提供するアクセス経路を通じてユーザーが旧バージョンのモデル(v1.xおよびv2.1)を利用した際に、Getty ImagesまたはiStockのウォーターマークに酷似したサインが合成画像に意図せず出現した点については侵害が成立した。ただし、最新モデルに関する商標権侵害の請求は、英国での使用に関する証拠がないとして棄却され、商標の希釈化や評判の毀損などに当たる商標法10条(3)項に基づく請求も棄却された。
この判決を受けてGetty Imagesは声明文で、侵害責任をユーザーに負わせようとするStability AIの試みが裁判所によって退けられ、モデルプロバイダーに責任があることが確認された点を「知的財産権所有者にとって重要な勝利」だと強調した。しかし、透明性要件の欠如により、著作物を保護する上で「重大な課題」に直面していることに対し「深い懸念」を表明し、英国を含む各国政府に対し、費用のかかる法廷闘争を防ぎ、クリエイターが権利を保護するために不可欠な「より強力な透明性ルール」を確立するよう強く要請した。
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