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「Sora 2」が踏んだ虎の尾 国内から怒りの声明続出も、立ちはだかる著作権法の“属地主義”小寺信良のIT大作戦(1/2 ページ)

» 2025年11月14日 10時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

 9月30日、米OpenAIが動画生成AI「Sora 2」を発表した。従来のモデルと比べて驚異的に精巧な動画を、音声付きで生成できる。CEOのサム・アルトマン氏が自分の顔のデータを公開したことで、アルトマン氏の顔を使った大量のコラ動画が生成された。

 それだけなら面白おかしいで済んだ話だが、日本のアニメやゲームキャラクターが生成できることが分かると、こちらも大量のコラ動画が発生した。

 もちろんこの生成には、原作者など著作権者に何らかのフィーが発生するわけではない。ある意味やられっぱなしの状態となった。当然日本の著作権系の団体からは次々と非難の声が上がり、無断で学習するなという趣旨の共同声明を発表するなど、慌ただしい事態となっている。

 その一方で、日本の著作権法では、AIの学習には許諾がいらないという立て付けになっている。日本とアメリカという、国をまたいだ権利の扱いが、本格的な問題となった。

 今回は「Sora 2」を例に、AIの学習と著作権の関係について、整理してみる。

Sora 2を巡る日本の動き

 「Sora 2」発表以降の著作権関係の動きを、まとめてみる。

 まず発表から数日後となる10月4日という早い段階で、アルトマン氏の個人ブログで、日本からの著作権者から寄せられた抗議に対して反応している。権利所有者に対して、キャラクターの生成に関するより詳細な制御方法を提供すること、動画生成に収益モデルの導入を準備していることの2点を改善方針として提示した。

 ただしこれはあくまでもCEOの個人ブログの話であり、OpenAIとしての公式発表ではない。またすぐに導入されるわけでもなく、この対応が実施されるまでは引き続き侵害は続くということになる。一種の「火消し」とも思われる。

 10月10日には、城内実 内閣府特命担当大臣が日本政府の意向として、「OpenAI社に対し、著作権侵害となるような行為を行わないよう要請した」と発表した。

 また10月12日には平将明 デジタル相がTBSの番組にて、OpenAIに対してオプトイン方式を取るよう要請していると明らかにした。

 オプトイン方式とは、機械学習する前に権利者に許諾を取る方式である。一方OpenAIが主張するオプトアウト方式は、出力に問題があったら言ってください取り下げます、というものである。

 その後、ご承知のように10月21日には高市内閣が発足し、新たに内閣府特命担当大臣には、日本のコンテンツ事情に詳しい小野田紀美氏が就任した。小野田氏は10月28日の会見で、「著作権侵害となる行為を行わないように要請を行う、事務方においてOpenAIとの対話を密に行っていると承知している」と発言している。

 つまり日本政府からも働きかけは行っているが、まだ具体的な成果は何も得られていないことが分かる。

 同じ10月28日には、出版社やアニメ制作会社などで構成される団体、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が、米OpenAIの動画生成AI「Sora 2」に関し、27日付で同社に要望書を提出、「Sora 2」の運用方法の変更を求めたと発表した。

 続く10月31日には、講談社やKADOKAWAなどの出版社17社と、日本漫画家協会、アニメ制作会社を中心に構成される日本動画協会(東京都文京区)が、共同声明を発表、生成AIを利用する際のルールや権利侵害への対応方針を示した。

著作権法の立て付け

 AIに対する機械学習への対応として、日本の著作権法は2018年という早い段階で改正が行われた。著作権法30条の4は(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)として、

「著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」

としている。

 その利用の可能性として、

  1. 著作物の利用(例: 録音、録画)に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
  2. 情報解析の用に供する場合
  3. 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラム著作物における実行を除く)に供する場合

 の3つを挙げている。AIの学習は、2および3が該当すると考えられる。2018年当時、AIの機械学習のおもな想定は自動運転などであり、現在のようなチャット型や画像生成型AIの急速な普及は十分に想定されていなかった。読売新聞の2023年の指摘によれば、「政府が法改正当時、AIによる著作権侵害の可能性を権利者側に十分説明していなかった」とある

 それでは日本の著作物はAIに学習され放題になるのか、ということになるが、ここにはおなじみの但し書きがある。「ただし、当該著作物の種類及び用途ならびに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」というヤツである。

 いわゆる安全弁としてよく設置される条文であるが、ここが権利者団体が「著作権法に違反する」と主張する根拠になる。結果として勝手にキャラクターが生成されることは、著作権者の利益を不当に害しているからだ。

 著作権法違反なら、著作権者を代表して日本政府がもっと強硬に法的強制力を伴った命令を発するべきではないか、という疑問も当然出てくる。現時点での政府のアプローチは、あくまでも要請と対話でしかない。

 これは著作権法が「属地主義」を基本としているからだ。著作権は各国の国内法によって独立して成立・保護されるというのが国際的原則である。従って日本の著作物が侵害された場合でも、日本の法が直接適用されるのは「日本国内で行われた侵害行為」に限られる。

 OpenAIには日本法人があり、そこが日本向けにサービスを提供しているといった場合には該当する。ただ実際に日本法人が主体的なサービス提供者といえるのかは、調査してみないとわからない。よって日本の著作権法が直接適応できるかわからない現状においては、声明を上げて対応を要請し、同時並行してOpenAIが対応すると表明しているオプトアウトを申請する、ということになる。

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