ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

ガイナックスの破産整理終了、庵野秀明氏が報告 旧経営陣の「正当性を欠く権利移譲、資料譲渡」も明らかに

» 2025年12月11日 13時31分 公開
[ITmedia]

 「新世紀エヴァンゲリオン」などを世に送り出した「株式会社ガイナックス」の破産手続きが終了し、42年弱の歴史に幕を閉じた。カラーの庵野秀明氏が12月11日に報告した。「創設期から20年以上籍を置き、今日まで株主として関わっていたものとして誠に残念な最後ですが、静かに受け止めています」。

 ガイナックスは1987年公開の映画「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の制作を目的に設立され、その後も庵野氏の初監督作である「トップをねらえ!」や「ふしぎの海のナディア」など有名な作品を生み出してきた。庵野氏はカラー設立後の2007年まで籍を置き、その後も株主、あるいは最大債権者として関わってきた。

 ガイナックスは2012年ごろから経営状態が悪化し、カラーが援助的な融資を行ったこともあった。そして19年には当時の巻智博社長が刑事事件で逮捕され、庵野氏は作品への影響を防ぐため奔走する。それまでの経営状況を調査し、KADOKAWAやキングレコード、トリガーと共に新経営体制も整えた。

 ガイナックスの経営状況はひどいものだったが、庵野氏は今回「新たに残念だったことがあります」として、旧経営陣の体制下で正当性を欠く権利移譲、資料譲渡が行われていたことを明らかにした。

 このため、カラーは当時の経営陣に対して民事訴訟を起こし、23年に被告からの謝罪を受け入れる形で和解が成立している。なお各作品の権利処理や譲渡については、新経営陣や関係各社の尽力により「正当な手続きをもって、各権利者やクリエイターに無事お戻しする事が叶いました」という。

 ガイナックスの経営状況を調査する過程で、旧経営陣の不誠実な対応も次々に明らかになった。「元福島ガイナックス代表の浅尾芳宣氏や大学時代からの友人と思っていた山賀博之氏、武田康廣氏らが弊社や自分に対して行っていた様々な虚偽対応の実態、山賀社長(当時)からガイナックス社員への自身を入院中とかたる居留守指示、弊社を敵対視した文言、返済を不当に逃れるための画策等、これらを改めて知るに至り、怒りを通り越して悲しくなりました」と庵野氏。「彼らとは昔のような関係にはもう戻れないであろうことを改めて思い知り、心底残念に思います」。

 24年5月、ガイナックスは債権回収会社から債権請求訴訟の提訴を受け、業務の継続は困難と判断。同年6月に破産申請を行った。そして12月10日付の官報で破産処理の終了が公表された。

 庵野氏の報告は、ガイナックス最後の代表取締役を務めた神村靖宏氏への感謝の言葉で締めくくられている。神村氏と庵野氏は大学時代からの友人であり、旧経営陣が責務を放棄した状態から、権利や資料の散逸を防ぎ、債権者へ真摯に向き合ってきたという。「神村、ありがとう。そして、御苦労様でした」。

カラーのWebサイトに掲載された庵野秀明氏の報告全文(1/2)
カラーのWebサイトに掲載された庵野秀明氏の報告全文(2/2)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

あなたにおすすめの記事PR