このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
X: @shiropen2
米国在住の物理学者であるルイス・バターリャさんは12月24日、1990年公開の映画「ホーム・アローン」に関する論文「How Likely Was the McCallister Oversleep? A Gaussian Model of Home Alone」を発表した。家族全員が、主人公の少年・ケビンを置き去りにするような寝坊は、どれほどあり得る話なのか確率を計算し、自身のX(@luismbat)で公開した。
ホーム・アローンでは、嵐による停電でマカリスター家の目覚まし時計が止まり、一家全員が寝坊してしまう。空港送迎のシャトルバスが到着する午前8時まで誰も起きず、大慌てで家を飛び出した結果、主人公の少年ケビンが置き去りにされるという物語の発端となる重大な出来事だ。国際線に乗る日に大人が何人もいる家で全員が午前8時まで寝過ごすというのは、直感的にはかなり起こりにくそうに思える。
では実際、この寝坊はどれほどありえない出来事だったのだろうか。
ルイスさんはこの疑問にガウス分布モデルを用いて検証した。分析の対象は家にいた大人4人、すなわちピーター、ケイト、フランク、レスリー。子供たちは普通もっと早く起きるため、計算からは除外されている。
米国の成人の週末における睡眠時間の調査データによれば、平均睡眠時間は約7.6時間、標準偏差は1.6時間だ。映画では明確な就寝時刻は示されていないが、夕食やパッキング、家族の言い争いを考慮すると、大人たちが寝たのは午後11時ごろと仮定するのが妥当だろう。となると、午前8時以降まで寝ているためには最低9時間の睡眠が必要となる。
標準正規分布を用いて計算すると、1人の大人が9時間以上眠る確率は約19.08%となる。4人の睡眠時間が互いに独立だと仮定すれば、全員が午前8時まで寝ている確率はこれを4乗したものになり、およそ0.13%。つまり約750回の週末の夜に1回という頻度だ。
もちろん現実にはこの確率をさらに下げる要因もある。子供たちが早起きして大人を起こす可能性、旅行前夜の緊張感、大人たちが2組の夫婦であることによる睡眠の相互干渉など。一方で就寝時刻を午前0時と仮定すれば、8時間睡眠で済むため確率は2.6%まで上昇するという感度分析の結果も示されている。
結論として、マカリスター家の伝説的な寝坊は、ありえないほどまれではあるが天文学的に不可能というわけではない。まさに素晴らしいホリデー映画を成立させるのにふさわしい、絶妙な低確率イベントだったということだ。
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