このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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イタリアのサクロ・クオーレ・カトリック大学に所属する研究者らがNature npj Mental Health Researchで発表した「Unexpected events and prosocial behavior: the Batman effect」は、バットマンのコスチュームを着た人物が地下鉄の車内に現れると、妊婦に席を譲る乗客が増えるかを検証した研究報告である。
研究チームはイタリア・ミラノの地下鉄において、138回の観察セッションを実施。実験では、妊婦を装った女性研究者が満席の地下鉄車両に乗り込み、乗客が席を譲るかどうかを記録した。
観察時間は1駅分(約2〜4分間)で、席が埋まっていることを条件とした。また妊婦役の女性とバットマンの間には一切関係ない他人設定で、後からバットマンが入ってきて妊婦と3m離れて待機した。
結果、通常の条件では37.66%の乗客が席を譲ったが、後に別のドアからバットマンの格好をした実験者が入ってきた場合、この割合は67.21%まで上昇した。統計的にも有意な差であり、バットマンの存在が席を譲る確率を高めることが示された。ただし、バットマンがいる条件で席を譲った人の43.75%が「バットマンを見ていない」と報告した。
バットマンという特定のキャラクターが持つ象徴的意味も考慮する必要がある。スーパーヒーローは正義や援助の価値観を連想させるため、これが社会的行動を促進した可能性も否定できない。今後の研究では、象徴的意味が異なるさまざまな予期しない出来事を用いて、この効果の境界条件を明らかにする必要がある。
Source and Image Credits: Pagnini, F., Grosso, F., Cavalera, C. et al. Unexpected events and prosocial behavior: the Batman effect. npj Mental Health Res 4, 57(2025). https://doi.org/10.1038/s44184-025-00171-5
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