ネコの死因1位ともされる腎臓系の病に侵されたネコのための新薬の実用化が近づいている。治験はすでに終了、4月には国に承認申請する計画で、研究開発を進める「AIM医学研究所」(略称IAM、東京都)の宮崎(崎はたつさき)徹所長(免疫学)は「臨床研究とほぼ同じ効果が得られた。できる限り早く実装したい」と意気込む。
ネコは加齢とともに腎機能に異常が出始めるとされる。ペット保険を手掛けるアニコムグループが2023年にまとめた「家庭どうぶつ白書」によると、ネコが0歳時には腎臓系を含む泌尿器の疾患での死因が3%なのに対し、5歳で27.1%、10歳で27.2%、15歳では29.2%といずれも1位となっている。
宮崎所長はスイス・バーゼル免疫学研究所(当時)主任研究員だった99年、多くの動物の血液中に存在するタンパク質「AIM」が体内の老廃物(ごみ)を排除する働きを発見。東京大大学院医学系研究科教授だった16年には、ネコのAIMが先天的に機能せず、腎臓内にごみが蓄積し、腎臓病になりやすいことを明らかにした。
正常に機能するAIMの投与はネコの腎臓病治療に効果があると気づいた宮崎さんは、ネコの治療薬開発をスタート。「ネコの宿命の病」治療に期待する愛猫家らからは3億円近い寄付も寄せられ、東大を辞めてIAMを設立し、23年には製薬ベンチャー「IAM CAT」も立ち上げ、資金調達を進めるとともに製造拠点を台湾に確保。25年5月から治験を始めていた。
治験は4段階ある腎臓病ステージのうち、2番目に重い「ステージ3」のネコを対象に開発したAIM薬を2週間おきに数回投与。一番重い「ステージ4」に入ると通常は数カ月しかもたないとされるが、薬を投与したネコで病状の進行はなく、全身状態が改善。治験前に行っていた臨床研究での投与から元気に5年以上生存しているネコもいるという。
3月には薬剤の安定性試験の結果もまとまる見通しで、4月にも農林水産省に承認申請、早ければ年内の実用化も視野に入る。「皆さんと一緒に作ってきたので、名前も一緒に考えたい」(宮崎所長)と、薬の販売名を公募中だ。
宮崎所長は人の治療薬開発も進めており、資金調達できれば1年半ほどで治験の「フェーズ1」に入れる見通しだという。宮崎所長は「ネコ薬開発を通じてたくさんのことを学んだ。ネコに続き、ヒトの『治せない病』の治療につなげたい」と話している。(木村さやか)
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