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いまさら聞けない「希土類元素」(レアアース) 実はそんなに“レア”じゃない元素の基本を解説(3/4 ページ)

» 2026年01月30日 08時00分 公開
[彩恵りりITmedia]

 岩石を掘り出し、そこから希土類元素を抽出した後でも、さらに課題があります。希土類元素はお互いに性質が似ているため、それぞれを分離するには複雑な化学処理が必要となります。

 それこそ歴史的には、17種類の元素に100以上の“新元素”の報告があったほどであり、分離の手間は現在でもかなりのものとなっています。さらに、放射性元素であるウランとトリウムは、希土類元素と似ているため、希土類元素を抽出する際に不純物として現れます。

 こうした形で、希土類元素の精錬時には「希土類元素抽出後の不要な岩石廃棄物」「採掘・抽出・分離の化学処理で生じた酸やアルカリなどの有害廃棄物」「ウランやトリウムを高濃度で含む放射性の廃棄物」が大量に出てきます。つまり希土類元素の採掘には、現状では大きな課題があることになります。廃棄物による環境負荷を抑えるためのコストは膨大であることも、対策を取る際の課題となります。

 このように、希土類元素の採掘や製錬には、現状では「環境負荷を抑える代わりに莫大なコストを支払う」か「コストを抑える代わりに、一部地域における環境負荷を無視するか」という重大な二者択一があります。希土類元素の貿易ではしばしば地政学的なリスクが話題となりますが、輸入元へ環境負荷を押し付けている構図も無視できません。

日本近海に「レアアース泥」が豊富に存在するが……

 一方で直近でもニュースになった通り、日本の南鳥島近海などの深海底には、希土類元素を豊富に含む「レアアース泥」が堆積しています。こちらは希土類元素の含有量が高い一方、放射性元素の含有量は低く、希塩酸のような弱い酸でも抽出が可能など、地上の鉱石鉱物と比べて優れた点がいくつもあり、資源量も膨大です。

 ただし、このレアアース泥が希土類元素の新たな資源となるかどうかは未知数です。もちろん、深さ数千mから泥を引き上げる技術的な課題もありますが、深海の環境を荒らしてしまう懸念という別の問題もあります。

 また深海は生物も無生物も、全てのサイクルがゆっくりと進行するため、一度受けた影響を何十年も引きずることがあります。深海は最大級の体積を持つ生物圏であり、大気中の炭素が行きつく先であるなど、地上に住む私たちも含めた地球全体の環境に影響を与えます。

 具体的な影響の事例としては、北太平洋のクラリオン・クリッパートン海域があります。ここでは1979年にマンガン岩塊という資源の試掘が行われましたが、この時には海底を削りながらマンガン岩塊を採集しました。44年後の23年に同じ海底を調査した結果、小型で移動性の低い生物は回復の兆しが見られたものの、大型で移動性が低い生物はほとんど回復していなかったことが判明しました。

 人類は深海底の0.001%未満しか探査をしていないといわれており、深海や深海底の環境の知見は非常に乏しいと言わざるを得ません。裏を返せば、悪影響があるかどうかについても正確なところは分かっていないとも言えます。

 マンガン岩塊とレアアース泥では、影響が違うかもしれません。しかし筆者としては、分かっていないからこそ拙速な資源開発は危うく、開発するにしても数十年スパンでの環境影響調査が必要であると考えています。

環境負荷の少ない希土類元素の採掘・リサイクル法の模索

 では、希土類元素の使用による環境負荷を抑えるにはどうしたらよいのでしょうか? 例えば、鉱山から鉱石を採掘するのではなく、別の資源から希土類元素を抽出する方法が提案されています。

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