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パイロットの「エアステップ」はなぜ気持ちよく、長く書けるのか? “アガるシャーペン”の仕組み、開発者に聞く分かりにくいけれど面白いモノたち(1/6 ページ)

» 2026年01月31日 08時14分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 シャープペンシルは、その機構の発明こそアメリカ発ではあるけれど、ぺんてるによるポリカーボネート芯などの発明から0.5mm芯が普及して以降、ほとんど日本の発明品と言ってもいい進化を遂げている。最近では、小学生が5000円以上の価格帯の製品を愛用するなど、筆記具の最前線は、もしかすると、シャープペンシルなのではと思えるくらいの盛り上がりを見せてもいる。

パイロットの「AIRSTEP」は各495円。芯径0.5mmのシャープペンシル

 そんな中で登場したパイロットの「AIRSTEP(エアステップ)」は、495円と買いやすい価格とポップでカジュアルなデザインながら、1回のノックで従来のシャープペンシルの3倍以上の筆記が可能という、疑似的な自動芯繰り出しのような機構を搭載。さらに細部まで気を配って作られていて、個人的な感想になるけれど、とにかく書き心地が良いのだ。

シャープペンシルの歴史

 シャープペンシルは、通常、尻軸にあるノックボタンを押すことで芯を出して筆記する。これを「ノブノック式」という。日本初のシャープペンシルである「エバー・レディー・シャープペンシル(早川式繰出鉛筆)」などで使われている、天冠部を回して芯を出す「回転ノック式」も、高級シャープペンシルなどで多く採用されていて、この二つが、まあ主流だろう。

パイロットによる最初のシャープペンシルは1927年に発売された。ノック式が開発されるのは1960年代なので、この当時のシャープペンシルは、この製品も含め回転式が主流だ
パイロットによる最初の「フレフレ式」搭載のシャープペンシル。1978年発売

 その後、1973年に発売された三菱鉛筆の「ペッカー」が私の世代的には懐かしい、軸の握っている指の辺りにノックボタンが付いた「サイドノック式」や、パイロットの「ドクター・グリップ」でお馴染み、軸を振ることで芯を出す「フレフレ式」、トンボ鉛筆の「オルノ」などで採用されている、ペンを握った親指を支点に、力を入れてグリップを折り曲げることで芯を出す「折り曲げ式」など、様々な芯の出し方を搭載したシャープペンシルが登場するのだけれど、これらは要するに筆記中の握りを持ち替えずに芯を出すためのメカニズム。つまり、芯を出す操作で筆記をなるべく中断させないようにという配慮のための機能だ。

 なので、その頂点は1回のノックで芯の長さ分は途切れずに書き続けられる「自動芯繰り出し」なのだけど、三菱鉛筆「クリトガダイヴ」や、ぺんてる「オレンズネロ」など、搭載製品は結構高価なものが多いのがネック。現在手に入る、実用上問題ないもので最も安価なものは、2200円のぺんてる「オレンズAT デユアルグリップ」だと思われるけれど、この製品が出た時、「自動芯繰り出しが、この価格で!」という衝撃があったくらい、まだ低価格帯で、安定して使える製品は難しい。また、後述するが、自動芯繰り出し機構にも欠点がない訳ではない。

パイロット「ザ・ドクター・グリップ」1045円。今回、取材を受けてくださった多賀さんが手掛けた、「ドクター・グリップ」シリーズのフラッグシップ。なんとフレフレ機構をロックする機能が付いている

 「パイロットのシャープペンシルでは、ロングセラーの人気商品『ドクター・グリップ』があるのですが、この製品は太軸で安定感のあるグリップと、振るだけで芯が出るフレフレ機構により長時間の筆記でも疲れにくいことが大きな特長です。『フレフレ機構』を搭載しているのでやや重いのですが、筆記具の好みは人それぞれで、細身や軽量タイプを好まれる方もいらっしゃいます。そこで、こうした“軽快さ”を求めるユーザーにも選んでいただけるモデルを作りたいという思いから開発を進めたのが『エアステップ』です」と話すのは、パイロットコーポレーション筆記具企画第一課の多賀丈恭さんだ。

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