映像業界では、2000年に入るあたりで4:3から16:9への画角変更を迫られた。横が格段に広くなったことで、構図の作り方が大きく変わった。例えば人物をフルショットで撮影しようと思ったら、横がものすごく広く余る。人は立っている限り、縦長の被写体だからだ。
横方向に空間が余ることで、イマジナリーラインが強く意識されるようになった。イマジナリーラインとは便利な言葉で、カット内の様々な要素を含むが、ここでは構図における被写体の正面性や進行方向といったものと考えていただきたい。
人物を捉える場合、顔や身体の向きを正面と捉え、そちら側の空間を広く開けることで、その後の動きを連想させ、構図は綺麗にまとまる。一方人物をセンターに捉えてしまうと、進行方向と逆側の空間がやけに無駄に見えてしまう。16:9は、横方向の空間を意識する構図が主流になった。
一方縦動画の場合は、横方向が異様に狭くなる。立っている人物は捉えやすくなるが、周囲があまり映らないため、どこにいるのかの空間的な表現が1カットで説明できない。
よって現在制作されている縦動画では、状況を示すための広い画角のカットを挿入することでこの問題を解決している。1カットで表現するなら横パンや横ドリーは有効だが、1話1分程度のコンテンツではそのような冗長なカットを入れる時間がないからだろう。
複数の人物のシーンは、1ショットでは対峙している複数人が同時に入らないので、多くはウエストショットの切り返しになる。ただ切り返しごとに撮り直している時間はないので、マルチカメラで一気に撮る方が合理的だろう。
また縦動画では、広い空間や開放的な風景を表すことは少ない。ランドスケープは基本的に横に広いものであり、縦は地面と空しかない。半分ぐらいが空になってしまうのでは、情景の表現にはなりにくい。
建造物なども横方向が入らないので、正面を切り取るような格好で表現するしかない。建造物は高層ビル以外はたいてい横長なので、全景を入れようとするとかなり斜めから撮ることになり、イマジナリーラインの構成に無理が出る。
ただ高層ビルなどは下からの見上げショットは見応えがあるので、権威の象徴としてのショットは撮影しやすいだろう。
昨今は、1度の撮影で縦と横のコンテンツを制作するという現場も増えてきている。カメラも縦横同時に撮れるように、センサー全域を4:3や3:2の6Kぐらいの解像度で撮影する、オープンゲート撮影に対応するものが出てきた。
ただこの方法論でいけるのはビデオポッドキャストのようなカメラ固定で進行する長尺コンテンツだ。カット割りが必要なドラマ撮影では、縦と横では構図の考え方が違ってくるので、1台のカメラで撮るのは無理がある。またカットの意味が変わってくるので、縦と横を同じ編集でやれるとは限らない。それほど単純な話ではないのだ。
そのあたりはすでに縦横のコンテンツを同時に制作している、SNSインフルエンサーの方が要領がいい。彼ら彼女らは、縦撮り用と横撮り用のカメラとカメラマンを別々に用意して、同時進行で撮影している。カメラ1台でいけるわけないとわかっているのだ。
今後縦動画制作は、映像制作会社や撮影会社でも本格的に行われるようになるだろう。その変化は、4:3から16:9になった時よりも大きい。本質的に、違うものだ。
マイクロ動画の制作は日本でも行われようとしており、その対応は今から準備しておかないと、波に乗り遅れる可能性がある。
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